日本大百科全書(ニッポニカ) 「田原坂(民謡)」の意味・わかりやすい解説
田原坂(民謡)
たばるざか
熊本県の民謡。田原坂は熊本市北区にある坂で、明治時代は昼なお暗いほど立ち木に覆われていた。1877年(明治10)の西南戦争の激戦地になってから有名になった。西郷隆盛(たかもり)の率いる薩摩(さつま)軍は、近代的装備をもつ官軍に決戦を挑んだが、3月20日には敗戦が確定的になった。このようすを、薩摩軍の本陣がある人吉(ひとよし)まで伝える役目を命じられたのが、この唄(うた)にも歌われている20歳の美少年三宅(みやけ)伝八郎であった。実際にこの唄ができたのは1904~1905年(明治37~38)の日露戦争のころで、かつての田原坂の激戦を歌い上げて、士気を鼓舞しようとしたもの。歌詞は九州日日新聞記者の入江某がつくり、熊本の芸妓(げいぎ)留吉が作曲したと伝えられている。
[斎藤 明]