玉襷(読み)タマダスキ

デジタル大辞泉 「玉襷」の意味・読み・例文・類語

たま‐だすき【玉×襷】

[名]たすきの美称
「衣の袖に―上げ」〈盛衰記一八
[枕]
たすきをうなじに懸けるところから、「うね」「懸く」にかかる。
「―畝傍うねびの山の」〈・二九〉
「―かけず忘れむ事はかりもが」〈・二八九八〉
「雲」にかかる。万葉集・一三三五の「玉だすき雲飛山うねびのやま」を読み誤ったところからという。
「―雲ゐる山の初桜花」〈夫木・四〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「玉襷」の意味・読み・例文・類語

たま‐だすき【玉襷】

[1] (「たま」は美称)
① 「たすき(襷)」の美称。
万葉(8C後)三・三六六「海神(わたつみ)の 手に巻かしたる 珠手次(たまだすき) かけて偲(しの)ひつ 大和島根を」
② 仕事の邪魔にならないように、袖(そで)をたくし上げて後ろで結ぶこと。また、たくしあげる紐。
平家(13C前)三「狩衣に玉だすきあげ、小柴垣壌(こぼ)ち大床(おほゆか)の束柱割りなどして、水汲み入れ」
③ たすきが交差し絡み合うように、事が掛け違いわずらわしいさまのたとえ。
古今(905‐914)雑体・一〇三七「ことならば思はずとやは言ひはてぬなぞ世中のたまたすきなる」
[2]
① たすきをかける意で、「掛(かく)」にかかる。
※万葉(8C後)一〇・二二三六「玉手次(たまだすき)かけぬ時なき吾が恋はしぐれし零らば濡れつつも行かむ」
② たすきを頸(うなじ)にかける、または頸(うな)ぐところから、「頸(うなじ・うなぐ)」と類音を含む地名「畝傍(うねび)」にかかる。
※万葉(8C後)一・二九「玉手次(たまだすき) 畝火の山の 橿原の 日知(ひじり)の御代ゆ 生(あ)れましし 神のことごと」
③ 「雲」にかかる。「万葉‐一三三五」の「玉手次(たまだすき)雲飛山(うねびのやま)」の「雲飛山」を誤読したところから生じた語か。
※夫木(1310頃)四「尋きて今ぞしめ結(ゆ)ふ玉たすき雲ゐる山の初さくら花〈藤原知家〉」
[補注](一)①は実際に勾玉・菅玉などの玉の付いた襷であるとする説と、玉に実質的な意味はなく単に襷の美称であるとする説がある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の玉襷の言及

【襷】より

…和服が衣生活の主体であった昭和初期ころまで,たすきは階層や性別を問わず生活必需品であった。たすきの材料は,古代には日蔭蔓,木綿,ガマ(蒲)などが使われ,《万葉集》には〈木綿襷〉や〈玉襷〉の名が見えている。玉襷は勾玉や管玉などをとおしたたすきで必ずしも美称ではない。…

※「玉襷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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