猿楽・申楽・散楽(読み)さるがく

精選版 日本国語大辞典 「猿楽・申楽・散楽」の意味・読み・例文・類語

さる‐がく【猿楽・申楽・散楽】

〘名〙
① 中古から中世にかけて、即興のこっけいな物まね言葉芸のこと。日本古来のこっけいなわざに、唐から伝わった散楽(さんがく)が加味されてできたもので、散楽が転訛して「猿楽」となった。相撲(すまい)節会(せちえ)や内侍所(ないしどころ)御神楽の夜などの余興として、臨時に工夫して演じられたりした。さるごう。
平家(13C前)一「法皇ゑつぼにいらせおはして、者どもまいって猿楽つかまつれと仰ければ」
② ①が民間に移り、中古から中世にかけて、寺社に所属する職業芸能人が、祭礼の際などにこっけいなわざや曲芸を演ずる芸能。中世に入って次第に演劇化し、能と狂言に分化する。
※新猿楽記(1061‐65頃)「今夜猿楽見物許之見事者。於古今有」
③ 中古から中世にかけて、大寺社の修正会・修二会などの法会で、法呪師の行法の後で、参詣者に行法の威力をわかりやすく説明する演技。寺社に所属する猿楽法師が担当した。呪師猿楽。
④ 中世後期から近世にかけての能楽の古称。明治一四年(一八八一)設立の「能楽社」の名称以来、能楽と改称大和猿楽近江猿楽丹波猿楽などがあり、当時田楽(でんがく)と対抗した。近世でも観世金春宝生金剛四座を称することもあった。
※新札往来(1367)上「新座本座之田楽、并和州・江州猿楽」

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