片下(読み)かたおろし

精選版 日本国語大辞典 「片下」の意味・読み・例文・類語

かた‐おろし【片下】

〘名〙
上代歌曲の歌い方の一つ。一首の歌を本・末に分けて歌う時、一方の調子を下げて歌うこと。
古事記(712)下「王(おほきみ)を 島に放(はぶ)らば 船余り い帰り来むぞ 我が畳ゆめ(こと)をこそ 畳と言はめ 群が妻はゆめ、とうたひたまひき。此の歌は夷振(ひなぶり)の片下(かたおろし)ぞ」
② 平安時代の神楽歌、東遊歌などに見える①の歌い方で歌う曲の名、あるいは、曲の部分の名。後には雑芸の一つとなった。
琴歌譜(9C前)片降「片降、木綿垂(ゆふしで)の 神が崎なる 稲(いな)の穂の 諸穂(もろほ)に垂(し)でよ これちふもなし」
馬術で、差縄を片口にとって、おろし足に馬をあゆませること。
※鹿足之次第(1477)「片おろしに行と云は、皆片口ゆへの事なるべし」

かた‐さがり【片下】

〘名〙
① 一方の下がっていること。かたおち。
夫木(1310頃)三三足引の山にかけたる水ばかりかたさがりにも落つる滝かな〈藤原信実〉」
② 特に、着た衣服の一方の裾が下がっていること。

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