片上伸(かたかみのぶる)(読み)かたかみのぶる

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

片上伸(かたかみのぶる)
かたかみのぶる
(1884―1928)

評論家、ロシア文学者。愛媛県出身。天絃(天弦)(てんげん)などの号も用いる。早稲田(わせだ)大学文科を卒業後、『早稲田文学』の編集に携わる。全盛期の自然主義を擁護すべく、「無解決の文学」(1907)などの評論を発表するが、その実質は、自然主義に飽き足りぬ浪漫(ろうまん)的、主観的、理想的要素を多く有していたため、しだいにその傾向が顕著になった。1913年(大正2)第一評論集『生の要求と文学』を刊行。大正期には革命前後のロシアに留学。帰国して早大露西亜(ロシア)文学科の開設に尽くすとともに、文学の社会性、階級性の問題を説いた。昭和3年3月5日脳溢血(のういっけつ)のため死去

[紅野謙介]

『『片上伸全集』全3巻(1938~39・砂子屋書房)』

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