精選版 日本国語大辞典 「煙管」の意味・読み・例文・類語
キセル【煙管】
〘名〙 (khsier 「管」の意)
① 管の一端に刻みタバコをつめて火をつけ、他端の吸口からその煙を吸う道具。両端が金属、途中が竹でできている物が多い。タバコをつめる口を火皿、火皿のついた湾曲している部分全体を雁首(がんくび)、雁首と吸口の中間の管を羅宇(ラウ)と呼ぶ。日本に慶長(一五九六‐一六一五)頃に伝来したとされる。キセリ。キセロ。キセル筒。

※梅津政景日記‐慶長一七年(1612)四月二六日「院内にてきせるをかい、ふききせるの様にいたし」
※臍繰物語(1938)〈渋川驍〉「長火鉢の前にキセルを持って坐ったが」
② 昔、芝居で喫煙用の火縄を売った者。火縄売。
※劇場新話(1804‐09頃)上「半畳火縄売りは揚幕の際に片寄居る。〈略〉一名きせるといふ」
③ (銀煙管に似ているところから) 「とかげ(蜥蜴)」の異名。
※雑俳・柳多留‐七八(1823)「太いきせるだぶちころせぶちころせ」
④ (「先とあとに金がある」というところから) 選挙での買収方法の一つ。投票前と後の二回に分けて有権者に金を渡すこと。〔モダン語辞典(1930)〕
⑤ (「キセルのり(━乗)」の略。キセルの雁首と吸口だけに金(料金)がついているところから) 鉄道などの不正乗車の一つ。乗車駅付近と降車駅付近の乗車券だけを持ち、途中の区間の運賃を支払わないこと。〔モダン語辞典(1930)〕
※水で書かれた物語(1965)〈石坂洋次郎〉三「キセル(汽車の定期券をゴマかしてただ乗りをやっていたからだという)というあだ名の若い体操教師が」
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