法外組合(読み)ホウガイクミアイ

デジタル大辞泉 「法外組合」の意味・読み・例文・類語

ほうがい‐くみあい〔ハフグワイくみあひ〕【法外組合】

アウトサイダー3

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精選版 日本国語大辞典 「法外組合」の意味・読み・例文・類語

ほうがい‐くみあい ハフグヮイくみあひ【法外組合】

〘名〙 労働組合法の定める一定の要件を満たさない労働組合使用者利益代表参加を許すもの、使用者から経費援助を受けるもの、福利事業や政治・社会運動を目的とするものなどは、同法の定める救済手続が受けられない。アウトサイダー組合

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「法外組合」の意味・わかりやすい解説

法外組合
ほうがいくみあい

労働組合法上の労働組合となるための要件を満たしていない組合のこと。アウトサイダー・ユニオンともいう。元来アメリカでは、会社側に取り込まれた御用組合company union, inside unionとは逆の労働組合のことをアウトサイダー・ユニオンoutsider unionといい、自主的な組合を意味する。しかし日本では、労働組合法第2条本文の要件(自主性の要件)および第5条2項の要件(民主性の要件)を満たした労働組合を法内組合、これらを欠くものを法外組合という。自主性の要件とは、使用者の利益代表者が加入していたり、使用者から経費援助を受けることなどを通じて使用者に支配されていないことをいう。また、民主性の要件とは、組合内で民主主義を確保するために労働組合法第5条2項に掲げる9項目を組合の規約中に定めることをいう。労働組合は、自主性および民主性の要件を満たしていない場合、労働組合法で定める手続、すなわち法人登記(11条)、労働協約の地域的拡張適用の申立て(18条)、労働委員会の委員の推薦手続(19条以下)および不当労働行為の救済申立ての手続(7条、27条以下)に参加することができない。このような不利益を与えることを通じて労働組合法の要件を具備するように促すことが立法目的である。

 しかし、民主性は欠いていても自主性のある組合の場合は、日本国憲法第28条で保障する団結権の権利主体であるといえるから、労働組合法によりとくに設けられた手続への参加はできなくとも、憲法第28条の権利は享有しうるのであり、団体交渉や争議行為刑事免責民事免責が認められ、労働協約も締結できる。自主性、民主性の要件を満たしているか否かの審査は、労働組合が労働組合法上の手続の申立てをするたびに労働委員会が行うのであり、労働組合の設立に際して審査が行われるわけではない。この資格審査を経て初めて手続に参加でき、もし資格要件に欠けるところがあれば労働委員会が補正勧告をする。なお、法外組合の場合、組合としては不当労働行為の救済申立てはできないが、所属する個々の労働者自らが申立てをすることはできる(労働組合法5条1項但書)。

[吉田美喜夫]

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改訂新版 世界大百科事典 「法外組合」の意味・わかりやすい解説

法外組合 (ほうがいくみあい)

労働組合法は,その2条において同法上の労働組合の概念を定めるが,この概念に合致した労働組合に対してただちに同法の定めるすべての利益・保護を与えるということはしていない。別に組合民主主義に関係する一定の事項を組合規約の必要的記載事項とすることによっていわゆる民主性の要件を設定し(5条2項),この要件をも満たした労働組合だけが〈この法律に規定する手続〉〈救済〉にあずかることができるとするのである(5条1項)。このようにして,労働組合法の定める要件の充足いかんという観点からすると,実在する労働組合は,(1)2条および5条2項の要件をすべて充足するもの,(2)2条の要件だけを充足するもの,(3)両方とも充足しないもの,のいずれかに分類されることになるが,法外組合という名称はこれらのうちの第2類型の労働組合について用いられるのが通例である。第1類型の完全資格組合がしばしば法内組合と呼ばれることとの対比で使われはじめたもののようであるが,2条自体が同条の要件を充足するものは労働組合法上の労働組合である旨を明記していることからすると,明らかに妥当性を欠く表現である。5条2項の民主性の要件を欠いているという意味で〈非民主的組合〉という表現のほうがまだしも欠点が少ないといえよう。実質的な法律問題として重要なのは,定義規定としての2条の意義を没却させないために,5条2項のいう〈この法律に規定する手続〉〈救済〉の範囲を限定的に解し,法外組合,非民主的組合に対してなるべく広く労働組合法上の利益・保護を認めていくということである。この立場にたつと,不当労働行為の申立て・救済(27,7条),法人登記(11条)は否定されるほかないが,労働協約の地域的拡張適用の申立て(18条1項),労働委員会の労働者委員の推薦(19条7項)などは,これらの組合についても認められるべきことになる。
労働組合
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「法外組合」の意味・わかりやすい解説

法外組合
ほうがいくみあい

労働組合法2条に定める労働組合の資格要件を満たさないか,または資格要件は満たすが,同法5条2項の要件を満たさない労働組合。すなわち,(1) 使用者の利益を代表する者の参加を認めている組合,(2) 使用者から若干の経理上の援助を受けている組合,(3) 共済事業などの福利事業のみを目的とする組合,(4) 主として政治・社会運動を目的とする組合 (以上労働組合法2) ,および組合規約に目的,組合員の資格,役員選挙の直接無記名投票などの必要記載事項 (5条2項) を規定していない組合である。法外組合は労働組合法上の保護を受けられず,またその手続に参加する資格をもたないとされている (5条1項) 。ただし法外組合の組合員は,個人として労働組合法7条1号に定める不当労働行為について救済を申立て,または救済を受けることができる (5条1項但書) 。なお一部を除いて民事,刑事上の免責,労働協約の締結能力は認められる。

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百科事典マイペディア 「法外組合」の意味・わかりやすい解説

法外組合【ほうがいくみあい】

アウトサイダー・ユニオンoutsider union。労働組合法の定める労働組合の資格要件を欠く労働組合。法外組合は,法人登記手続,不当労働行為の救済申立,労働委員会委員の推薦等,労組法上の手続,救済への参与および救済をうけえないとされる。しかし労働組合としての実体を有する限り,民事・刑事上の免責,労働協約の締結能力を認められるというのが通説。
→関連項目アウトサイダー労働組合

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世界大百科事典(旧版)内の法外組合の言及

【労働組合】より

…この労組法5条は,労働組合の定義規定,資格要件規定としての体裁をとらずに,実質的には付加的な資格要件を設定するものであり,それ自体はなはだ不明朗な規定というべきである。しかしそのこととは別に,労組法2条の要件は充足しているが同法5条の要件は満たしていない労働組合(法外組合)は,はたして労組法上の労働組合といえるのか,これに対していかなる範囲まで労組法上の利益・保護が与えられることになるのか,などの法的問題の生じる原因ともなっている。労働組合法【浜田 冨士郎】。…

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