梨・梨子(読み)なし

精選版 日本国語大辞典 「梨・梨子」の意味・読み・例文・類語

なし【梨・梨子】

[1] 〘名〙
① バラ科の落葉高木。アオナシおよびヤマナシから育成された果樹で、古くから栽植される。幹は高さ三メートル内外。葉は広卵形で長さ八センチメートルぐらい。花期は四月頃で径三センチメートル内外の白い五弁花を開く。果実は径五~一〇センチメートルの球形または倒卵形で、外皮に細かい斑点がある。果肉は水分と甘味に富む。長十郎など多数の栽培品種がある。本種のほかに西洋梨や野生種を総称していう場合もある。漢名、梨。なしのき。ありのみ。《季・秋》
正倉院文書‐天平宝字二年(758)八月三〇日・東大寺写経所食口帳「梨五斗二升」
② 紋所の名。梨の実の切口または花をかたどったもの。梨の切口菱・丸に梨の切口・梨の花・三盛梨の花などがある。
[2] 「なしつぼ(梨壺)」の略。
※雑俳・入船狂句合(1854)「勅撰に五人は梨へ真を籠め」
[補注](1)「書紀‐持統七年三月一七日」条に、桑、紵(からむし)、栗、蕪菁(あおな)等とともに五穀の助けとして栽培が奨励された記事があり、上代から実用として普及していたようで、「万葉‐三八三四」にも「成棗(なしなつめ)(きみ)に粟つぎ延ふ田葛(くず)の後もあはむと葵花咲く」とある。
(2)「なし」という語感は「無し」に通じるので、忌まれて「ありのみ」ともいわれる。「梨」と「ありのみ」を詠み込んだ「おきかへしつゆばかりなるなしなれどちよありのみと人はいふなり」〔相模集〕のような例も見られる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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