条虫(読み)ジョウチュウ(英語表記)tapeworm

翻訳|tapeworm

デジタル大辞泉 「条虫」の意味・読み・例文・類語

じょう‐ちゅう〔デウ‐〕【条虫/×絛虫】

条虫綱扁形動物総称。すべて寄生性。体は扁平でひも状。前端部以外は細かく分かれた体節からなる。瓜実うりざね条虫有鉤ゆうこう条虫無鉤条虫など。さなだむし。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「条虫」の意味・わかりやすい解説

条虫
じょうちゅう
tapeworm

扁形(へんけい)動物門条虫綱Cestodaに属する寄生虫の総称。俗にサナダムシという。脊椎(せきつい)動物の腸、まれに体腔(たいこう)に寄生する。固着器を備えた頭節と、それに続く片節とからなるが、単節のものもある。消化器はまったく退化し、栄養は体表から吸収する。雌雄同体で、片節には1組まれに2組以上の雌雄の生殖器をもつ。発育環には普通、中間宿主を必要とし、発育中に変態していろいろな形の幼虫をつくる。現在約3000種が知られる。条虫綱は単節条虫亜綱Cestodariaと真正条虫亜綱Eucestodaに分けられる。

[町田昌昭]

単節条虫類

体は単節で1組の生殖器を備え、卵から孵化(ふか)した幼虫は10本の鉤(かぎ)をもつ。ギロコチレ目はギンザメ類の腸に寄生し、体の尾端には漏斗(ろうと)状の構造があり、その辺縁には多数のひだがあって、これにより宿主の腸に付着する。発育環ははっきりわかっていないが、中間宿主を必要としないとの説もある。アンフィリナ目は淡水魚などの体腔に寄生し、体は長円形あるいは帯状で、頭端には突出可能な吻(ふん)があり、腺(せん)が開口する。これらは穿孔(せんこう)器と考えられる。発育環は不明なものが多いが、甲殻類が中間宿主となるものもある。

[町田昌昭]

真正条虫類

成虫はいろいろな脊椎動物の腸に寄生する。1個の頭節と数個ないし多数の片節とからなり、頭節には普通2個または4個の固着器(吸盤や吸溝など)を備えている。板鰓(ばんさい)類に寄生する条虫類には複雑なかたちの固着器をもつものが多いが、宿主の腸粘膜表面の構造によく適合している。頭節に続く部分はやや細くなって頸(けい)部とよばれ、この部分の分体によって片節がつくられる。したがって、片節は後方にいくにつれて成熟しており、最後部の片節は卵で満たされる。各片節には雌雄の生殖器を備える。真正条虫類は擬葉(ぎよう)目、円葉目、四葉(しよう)目、四吻(しふん)目などを含むが、擬葉目、円葉目以外はおもに魚類に寄生し、発育環はほとんどわかっていない。

 擬葉目は頭節に2個の吸溝をもち、成熟片節の腹面に子宮孔が開き、固有宿主の腸内で産卵する。卵は蓋(ふた)をもち、外界で6個の鉤を備えたいわゆる六鉤(ろっこう)幼虫が孵化し、第一中間宿主に取り込まれて前擬充尾虫(ぎじゅうびちゅう)に発育する。これが第二中間宿主に食われると擬充尾虫に発育する。擬充尾虫は頭節を備え、固有宿主に対して感染力をもつ。これが固有宿主に食われればその腸内で成虫になる。擬葉目には日本海裂頭条虫、マンソン裂頭条虫などが含まれる。

 円葉目は頭節に4個の吸盤をもつが、吸盤のほかに鉤や吻を備えるものもある。子宮は盲管で子宮孔がなく、卵は片節が破れて放出される。卵は蓋を欠き、中間宿主に取り込まれると六鉤幼虫が孵化していろいろな臓器組織へ移行し、嚢虫(のうちゅう)に発育する。中間宿主は普通一つである。嚢虫はその形態により擬嚢尾虫、嚢尾虫、共尾虫(きょうびちゅう)、包虫(ほうちゅう)に分けられるが、すでに頭節が形成されて固有宿主に対し感染力をもつ。共尾虫や包虫では出芽による頭節の増加がみられ、とくに包虫では著しい。円葉目には有鉤条虫、無鉤条虫、ネコ条虫、瓜実(うりざね)条虫、多包条虫(エキノコックス)などを含み、人畜の疾病を引き起こすものも多いが、それは成虫のほか嚢虫によっても引き起こされる。

[町田昌昭]

条虫による疾病

条虫によっておこる症状は、人や動物が固有宿主となってその消化管に成虫を宿す場合と、中間宿主あるいは移動宿主となって、いろいろな臓器や筋肉などに幼虫を宿す場合とで異なる。前者では、たとえば日本海裂頭条虫のように長さ数メートルの虫体を宿してもほとんど自覚症状をおこさず、ときに下痢や腹痛をおこす程度で、虫体が切れて糞便(ふんべん)といっしょに排出され、初めて寄生に気づくこともまれではない。成虫はプラジカンテルなどの薬剤で駆虫できる。条虫による病害は成虫よりも幼虫によるほうが大きく、致命的な結果を招くこともある。たとえば、有鉤条虫の幼虫(有鉤嚢虫)が脳や脊髄に寄生すれば、てんかん様発作、けいれん、麻痺(まひ)などの神経症状をおこし、多包条虫の幼虫(包虫)が肝臓に寄生すれば、小さな袋を次々と形成して肝障害をおこす。幼虫寄生の場合では外科的に摘出する以外、的確な治療法はない。

[町田昌昭]


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