木綿襷(読み)ユウダスキ

デジタル大辞泉 「木綿襷」の意味・読み・例文・類語

ゆう‐だすき〔ゆふ‐〕【木綿×襷】

[名]木綿ゆうで作ったたすき。神事に奉仕するときに用いる。
「―かひなにかけて」〈・四二〇〉
[枕]
をからだにかける意で、「かく」にかかる。
「―かけても言ふな」〈後撰・夏〉
を結ぶ意で、「むすぶ」にかかる。
千年をば我ならずとも―結びの神も祈りかくらむ」〈元輔集

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「木綿襷」の意味・読み・例文・類語

ゆう‐だすき ゆふ‥【木綿襷】

[1] 木綿(ゆう)で作った襷。神事に奉仕するとき、これを用いて袖をからげた。中古以降は、歌語として、たすきをかける意で「かく」を引き出す序詞などとして用いられることも多い。
書紀(720)允恭四年九月(図書寮本訓)「是に諸人各木綿手繦(ユフタスキ)を着して釜に赴きて探湯(くかたち)す」
源氏(1001‐14頃)賢木「かけまくはかしこけれどもそのかみの秋思ほゆるゆふだすきかな」
[2]
① たすきを、肩または腕にかける意で「かく(掛)」にかかる。
※後撰(951‐953頃)夏・一六二「ゆふだすきかけてもいふなあだ人の葵てふ名はみそぎにぞせし〈よみ人しらず〉」
② たすきを結ぶ意で、「むすぶ」にかかる。
蜻蛉(974頃)上「ゆふだすきむすぼほれつつ歎くこと絶えなば神のしるしと思はん」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「木綿襷」の意味・わかりやすい解説

木綿襷 (ゆうだすき)

神事のときに木綿(ゆう)を襷にかけることをいう。襷は手(襁)とも書く。木綿は楮(こうぞ)の樹皮を蒸して水にさらし,細く割いたもので,代りに麻を用いることもある。《日本書紀》天の石窟戸(いわやど)の段に,天鈿女(あめのうずめ)命が,蘿(ひかげ)を手にして神がかりしたとあり,允恭4年9月条には,木綿手をつけて探湯(くかたち)したとある。現行では遷宮のときなどに用い,左右肩より左右両脇下に斜にかけ,体の前後で交差するか,左肩より右脇下に斜にかける方法がある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報