景気予測(読み)けいきよそく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「景気予測」の意味・わかりやすい解説

景気予測
けいきよそく

将来景気がどうなるかを推測すること。将来の経済活動の推移は、政策当局にとっても、民間の個々の経済主体にとっても、大きな関心事である。たとえば、近い将来景気が悪化すると予想されるならば、政策当局者は、現時点において景気刺激的な財政金融政策を考慮する必要があるであろうし、企業家は、過剰在庫を抱え込むことを避けるために、設備投資や在庫投資を控えなければならないであろう。

 景気予測にはさまざまな方法があるが、代表的なものとしては、景気指標によるもの、産業連関分析によるもの、マクロ計量経済モデルによるものなどがあげられよう。景気指標による予測は、景気が現在どのような局面にあり、近い将来どのように転回するかを把握しようとするものであって、1910年代にハーバード大学経済調査委員会によって作成されたハーバード・インデックス・チャートHarvard Index Chartが先駆的なものである。これは、経済統計23系列を、株式市場に関するもの(A)、商品市場に関するもの(B)、および金融市場に関するもの(C)に分類し、それぞれを単一の指数で表示、A→B→Cのタイム・ラグ(それぞれ8か月、5か月)をもって景気局面が変わることを明らかにした。この方法に基づく予測は、当初はかなりの成功を収めたが、1920年代以降的中率が落ち、1941年をもって廃止された。景気指標による予測にはこのほかに、アメリカのNBER(National Bureau of Economic Research)で開発されたディフュージョン・インデックスdiffusion indexDI。拡散指数あるいは散布指数)や、日本の内閣府(旧経済企画庁)が作成している「景気動向指数」などがある。

 産業連関分析や計量経済モデルによる予測は、景気指標によるそれとは異なり、景気転回点の予測というよりも、経済諸量の将来の絶対水準の予測という経済予測性格が強い。

[大塚勇一郎]

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知恵蔵 「景気予測」の解説

景気予測

数カ月から2年程度の先行きを予測する短期経済予測をいうことが多い。一般に経済予測の手法としては計量経済モデルによる方法と段階的接近法がある。段階的接近法は消費・民間設備投資・住宅投資等といった各項目を予測し、それを積み上げ、GDPなどの全体を計算し、その結果を基に各項目を見直し、再度全体像を描く。この作業を一定の姿に収れんするまで繰り返し行う予測手法である。他方、計量モデルは因果関係を持つ経済行動の関係を、過去の統計を用い定量化した関係式の連立体系。その体系に新しいデータや政策変数などの外生変数の前提条件を与えて行う手法が計量モデル予測である。なお、毎年12月に発表される政府経済見通しは、内閣府を中心に他省庁との意見調整によって作成され閣議で決定される次年度についての経済予測であり、次年度の予算作成に用いられる。同時に、政府の経済運営の指針となるため、一種の政策目標としての性格が強い。特に財政政策は税収見通しや公共投資額の決定という点で、政府経済見通しを基礎としている。民間の行う経済予測とは性格を異にする点に、注意しなければならない。

(本庄真 大和総研監査役 / 2007年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「景気予測」の意味・わかりやすい解説

景気予測
けいきよそく
economic forecasting

将来における経済活動がどう推移するかを種々の経済的データや分析方法を用いて,あらかじめ予測すること。経済予測ともいう。景気予測が統計的資料を使って盛んに行われるようになったのは第1次世界大戦後のことであるが,単に将来の景気の推移を予知するだけの目的にとどまらず,個別企業の生産計画や投資計画の作成,あるいは政府の経済政策の立案,実行にとっても不可欠の要件となっている。景気予測の方法は計量経済学の発達とともに,初期の景気動向指数やサーベイ・データによる簡単なものから,より数量的でより包括的なものへと精緻化されてきているが,完全な予測方法といわれるものはない。日本における景気予測方法の代表的なものとしては,(1) 景気全体を単一の総合指数で表示する景気動向指数法,(2) サーベイ・データ法,(3) 段階的接近法,(4) 短期マクロモデル法の4つである。

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