景品(読み)ケイヒン

デジタル大辞泉 「景品」の意味・読み・例文・類語

けい‐ひん【景品】

商品に添えて客に贈るおまけの品物。「景品付き大売り出し」
催しなどで、主催者側が参加者に贈る品物。「福引き景品
パチンコや射的などの遊技で、得点者に与える品物。
[類語](1景物添え物おまけ食玩/(2賞品褒美賞金褒賞報賞恩賞

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精選版 日本国語大辞典 「景品」の意味・読み・例文・類語

けい‐ひん【景品】

〘名〙
① 売る品物に添えて、客に贈る品。景物。おまけ。
※彼女とゴミ箱(1931)〈一瀬直行〉浅草の胴体「もり三杯以上喰べた人は二十銭均一、四杯以上の人には景品(ケイヒン)を進呈致します」
② 行事や会合などの参加者に贈る品物。
風俗画報‐二七五号(1903)大阪祝日「協賛会の趣向にて福引景品(ふくびきケイヒン)を出すことと決定したりしかば」
③ 射的やパチンコなどの遊技で、得点者に与える品物。
④ 賞やほうびとして与える品。
※医師高間房一氏(1941)〈田畑修一郎〉四「優勝の景品が米俵だなんてね」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「景品」の意味・わかりやすい解説

景品
けいひん

販売する商品、提供するサービスなどに添えて顧客に贈る物品で、金銭(コインのつかみ取りなど)なども含まれ、販売促進を目的とし顧客に無料で提供する経済上の利益をいう。景物、おまけ、法令用語では景品類。景品の使用価値が販売するもののそれとは異なるのが基本で、品物などの増量は通常値引きとされる。景品は、顧客に購入するもの以外のものを無料で得るという満足感と割安感を与えること、価格引下げなしに顧客にアピールできること、とくに、新商品の発売、新規事業開始(新規参入)のときに人目をひいて広告としての効果が大きいことから、販売促進の重要な手段としてよく用いられる。

[植木邦之]

景品提供の方式

景品提供の方式は、
(1)すべての顧客に一定のものを与えるもの(総付け)、
(2)継続的な購入により一定金額に達した顧客に与えるもの、
(3)購入者のなかから抽選などで、価額の異なる景品を与えるもの(懸賞)、
の三つに大別されるが、懸賞方式では、特定の少数者に高額の景品の供与が可能で、これを得ようとする人々を購入者となしえることから販売促進効果が大きい。反面、射幸心をあおる面があり、アメリカのように禁止されることもある。

[植木邦之]

景品付販売の歴史

景品による販売促進は古くから行われ、1792年(寛政4)、江戸の紅問屋の玉屋が開店の際、山東京伝(さんとうきょうでん)の著作を景物として配布して成功したのが有名で、当時、著名な戯作(げさく)者の作品がしばしば景物本として利用されたという。明治時代に入ると景品の使用はさらに活発となり、1897年(明治30)、村井兄弟商会が輸入たばこの発売にあたり、金時計、自転車などの高額品を提供したのが有名で、江崎商会、森永製菓がキャラメル販売の際、子供向けの「おまけ」をつけたのも成功例として知られている。また新聞販売では生活用品が使われ、「鍋釜合戦」といわれた。外国でも景品の使用が激しく、20世紀初頭のドイツでは、それが中小企業を圧迫するとして禁止要求がなされ、1923年、大統領令(景品令)により禁止措置がとられている。

[植木邦之]

景品表示法の制定

第二次世界大戦後のわが国では、ドイツと同様な理由で、1952年(昭和27)ごろから、みそしょうゆなどの数種の日用品に添付される景品や、百貨店の販売に用いられる景品などが、独占禁止法の不公正な取引方法の一つ、不当な利益供与にあたるとして制限が行われた。しかし制限外の業種で懸賞販売が盛んとなり、たとえばウイスキーにハワイ旅行、10円のガムに1000万円が当たるというように、景品の最高額が高騰し、社会的批判が高まった。このため、1962年、景品の額を一定限度に制限できるようにした「不当景品類及び不当表示防止法」が制定されるに至った。

 この法律に基づき、公正取引委員会の告示で、懸賞方式の景品は最高額と総額、その他の方式は最高額が制限されており、また、相当数の個別の品目でも、告示または業界の規約により一般的制限よりも厳しい制限がなされている。

 なお、物品などの購入を条件にしないいわゆるオープン懸賞では、独占禁止法により、景品の最高額は1000万円までとなっている。

 法律による景品の規制は、販売される物品、提供されるサービスなどの品質と価格によって行うべきであるとの考え方を根拠にしているが、1990年代に入り、景品の提供が新規参入を容易にするという側面が着目されて、制限が相当程度緩和されている。

[植木邦之]

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改訂新版 世界大百科事典 「景品」の意味・わかりやすい解説

景品 (けいひん)

売る品物にそえて,客に贈る品物。おまけ,景物。商店の開店や周年記念として配られるほか,製造業者や流通業者が販売促進や顧客サービスのために付ける。本来の商品に景品を付けることにより,一つには割安感を客に与える。他方では,景品そのもののもつ魅力によって,別な付加価値を付ける効果もある。そのためには,市販していないものを景品として特別に作ることも多い。景品の付け方は三つに大別できる。(1)すべての商品に付ける方式(べた付け)。商店の場合には,来店者(購買者)にもれなく与える方式。(2)制限された数量が抽選により当たる懸賞方式。(3)点数券を与えて,一定期間後に,集めた総点数に応じて与える方式。

 古く江戸時代には,開店や大売出しのときに〈景物本〉と呼ばれる本が配られた。その最初のものは,1792年(寛政4)に山東京伝が日本橋の紅問屋玉屋の開店記念に書いた《女将門七人化粧》2巻だとされている。京伝のほかにも,曲亭馬琴,十返舎一九,式亭三馬などが景物本を書いている。広告を使った景品付き販売という形で,景品が販売促進に利用されたのは,明治時代になって広告競争が激化してからである。村井兄弟商会は,1897年輸入タバコ〈バアジン〉(10本入り4銭)の発売に当たって,金時計,自転車,幸田露伴の小説などを景品にした。ところが,懸賞に当たった人がいないといううわさが流れ,暴徒が店に乱入して陳列してあった景品の自転車を持ち出し,川に投げこむという騒ぎも起こった。景品の魅力は,子ども向け商品においてとくに発揮される。江崎商会のグリコは,点数券が付いていて,集めた点数に応じてさまざまな景品がもらえて人気を博した。また,1931年に行われた森永製菓の〈飛行機セール〉では,森永ミルクキャラメル30銭分買上げごとに紙製組立て模型飛行機材料1組を景品として提供し,300万台分の商品を売ったという記録が残されている。

 第2次大戦後は,景品付き販売が活発になった。固定客づくりを狙って化粧品各社は,資生堂の花椿会のような消費者組織を作り,会員サービスとして点数制による景品を提供して効果を上げた。1950年代後半からは,懸賞付き販売の景品が大型化して,電気製品,自動車,海外旅行へと拡大していった。行き過ぎた景品付き販売への批判も生まれ,62年〈不当景品類及び不当表示防止法〉の成立に至った。この法に基づいて,景品の金額は,商品の購入金額との関連で制限されることになった。さらに公正取引委員会では,べた付け方式による景品についても,独占禁止法上の〈不公正な取引方法〉として,高率な景品を制限した。現在の独占禁止政策では,景品付き販売を非価格競争の一態様と考えており,制限を加えることによって,価格や品質を中心とする適正な競争が強まるとみている。このほかに,業界によっては自主規制で景品付き販売を抑えようとしている。これらの規制によって景品の金額は制限されたが,景品付き販売そのものは現在でも広く活発に行われている。
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