福引き(読み)ふくびき

改訂新版 世界大百科事典 「福引き」の意味・わかりやすい解説

福引き (ふくびき)

今日では,一般にくじ引きをして景品を取りあう遊戯をいう。その原型は,730年(天平2)に聖武天皇が正月酒宴を開催した際に,諸臣に,仁,義,礼,智,信の一文字を記した短籍(たんざく)を抜きとらせ,引きあてた者それぞれに,絁(あしぎぬ),糸,真綿,布,常布を下付した余興に由来するとされる。その後,時代はずっと下るが,元禄年間(1688-1704)には,縄の先に品物をゆわえて引かせ,それを引きあてたものに与える遊戯が試みられるようになり,さらに寛延・宝暦年間(1748-64)には,〈辻宝引き〉と称して,街頭で100本の細縄を用意して,うち数十本には玩具を結びつけ,〈さござい,さござい〉とはやしながら,子どもたちを客にして引かせる大道商人があらわれる。今日,縁日屋台などで見かける〈福引き〉遊戯の始まりというべきであろう。さらに,明治時代になると,1898年には,日本勧業銀行が割増付債券を発行,以来,民間の商店でも,これに似た射幸の催事が流行し,1907年ごろからは,各都市の商店が年末年始の売出しの際などには,福引きの催事をもよおすことが一般化するようになった。なお,とくに正月に催す福引きは,古くは〈宝引き〉と呼ばれ,その年の福を占う年占行事としての色彩を色濃く帯びていたようである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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