旋回傾斜計(読み)せんかいけいしゃけい(英語表記)turn-and-bank indicator

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「旋回傾斜計」の意味・わかりやすい解説

旋回傾斜計
せんかいけいしゃけい
turn-and-bank indicator

航空機が旋回するときの角速度機体傾斜の度合いを示す航空計器旋回計 turn indicatorは,ジャイロ計器一種で,機首を左右に振るとき水平ジャイロに働くジャイロ・モーメントの大きさが角速度に比例することを利用して,旋回の角速度を指示する。傾斜計は機体に働く加速度の機体横断面 (機体の前後軸に垂直な平面) 内成分の方向を示すもので,通常ボール傾斜計 ball inclinometerと呼ばれる。これは気泡水準器気泡を重い球に取り替え,上下逆に取り付けたものと思えばよい (→水準器 ) 。ボールの位置がガラス管中央の最も低い位置にあれば,加速度成分は機体の対称面内にあるわけで,機体は横すべりせず飛行していることになる。もし右 (左) にずれていれば,加速度成分は対称面から左 (右) にずれていることになり,機体は左 (右) すべりを起こしていることになる。飛行機にとって,大きい横すべりは危険であり,乗客にとっても横すべりのために座席の一方向へ押しつけられる感じを受けるのは不快である。したがって操縦士は旋回飛行中でも,ボールが中央にあるように注意して操縦する。旋回計と傾斜計とはまったく独立計器であるが,操縦士の便宜のために1個の指示器にまとめて装備される。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「旋回傾斜計」の意味・わかりやすい解説

旋回傾斜計
せんかいけいしゃけい
turn and bank indicator

航空機が旋回する場合に、旋回の角速度を示すとともに、旋回が横滑りをせずにつり合った状態であるか否かを指示する計器。つまり旋回計と傾斜計を組み合わせた計器で、速度計や高度計とともにもっとも基本的な航空計器である。

 旋回計は、回転するジャイロの軸が空間で一定の方向を保ち続けるという性質を利用したもので、左右方向に回転軸をもつジャイロによって旋回の角速度を指示させる。傾斜計は、湾曲したガラス管の中に鋼またはめのう製の球を入れ、制動液(水、アルコール、油など)を満たしたもので、航空機が旋回するときに機体に作用する重力と加速度の合力の方向に球が振れることによって、旋回がつり合っているか、または舵(かじ)の切り方が不適当で内あるいは外へ滑っているかを指示する。

[落合一夫]

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世界大百科事典(旧版)内の旋回傾斜計の言及

【航空計器】より

…第2次世界大戦中および戦後は軍事上の要請もあって,レーダー,計器着陸装置(ILS),地上管制誘導設備(GCA)などの電波を利用した誘導方法,無指向性無線標識(NDB),超短波全方向式無線標識(VOR),距離測定装置(DME)などの航行援助無線施設,さらに慣性航法装置が開発,利用されるようになり,現在ではこれらの情報を表示する計器も重要な航空計器となっている。慣性航法航空保安無線施設
[種類]
 航空機の種類,用途,大きさなどによって装備される計器には多少の差異はあるが,飛行計器としては対気速度計,高度計,磁気コンパスやジャイロコンパス,人工水平儀,旋回傾斜計などが,航法計器としてはNDB,自動方向探知機,ADF,慣性航法装置などの表示器が,またエンジン計器としては回転計(ピストンエンジンではプロペラの回転数,ジェットエンジンでは圧縮機の回転数),シリンダー温度計(ジェットエンジンでは排気温度計),燃料流量計,燃料油量計,潤滑油油量計,潤滑油温度計,潤滑油圧力計などが基本的なものである。 対気速度計はピトー管を利用して航空機の空気に対する速度(対気速度)を表示するもので,測定された速度をそのまま表示する指示対気速度計と,大気の圧縮性や密度による誤差を補正して表示する真対気速度計があり,またマッハ数を表示するマッハ計を組み込んでいるものがふつうである。…

※「旋回傾斜計」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」