方鉛鉱(読み)ホウエンコウ(英語表記)galena

翻訳|galena

デジタル大辞泉 「方鉛鉱」の意味・読み・例文・類語

ほうえん‐こう〔ハウエンクワウ〕【方鉛鉱】

硫化鉛主成分とする鉱物鉛灰色金属光沢がある。ふつう正六面体結晶をなし、鉛の最も重要な鉱石鉱物

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精選版 日本国語大辞典 「方鉛鉱」の意味・読み・例文・類語

ほうえん‐こう ハウエンクヮウ【方鉛鉱】

〘名〙 硫化鉛を主成分とする鉱物。鉛灰色、不透明で金属光沢がある。等軸晶系で結晶は六面体八面体などをなす。鉛のもっとも重要な鉱石鉱物。〔鉱物字彙(1890)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「方鉛鉱」の意味・わかりやすい解説

方鉛鉱
ほうえんこう
galena

もっとも重要な鉛の鉱石鉱物。各種熱水鉱床、接触交代鉱床スカルン型鉱床)、黒鉱鉱床、ある種の含銅硫化鉄鉱床中に産し、多くの場合閃(せん)亜鉛鉱と共存し、鉛・亜鉛鉱石を形成する。自形立方体あるいはこれを基調とした立体、あるいはこれの集合体や塊状集合をなし、まれに六角板状となることもある。少量成分の銀の存在によって、銀の鉱石鉱物となることもある。日本では、秋田県藤里町太良(たいら)鉱山閉山)、埼玉県秩父(ちちぶ)鉱山、岐阜県神岡鉱山(閉山)、北海道豊羽(とよは)鉱山(閉山)をはじめ産地は多い。日本では例は少ないが、熱帯地方では酸化分解して、鉛を主成分とする二次鉱物、硫酸鉛鉱白鉛鉱などに変化しやすい。英名は鉛の鉱石を意味するラテン語をそのまま転用している。

加藤 昭 2018年7月20日]


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改訂新版 世界大百科事典 「方鉛鉱」の意味・わかりやすい解説

方鉛鉱 (ほうえんこう)
galena

最も重要なの鉱石。化学成分PbSで,セレン鉛鉱clausthalite PbSeとの間には連続固溶体を,テルル鉛鉱altaite PbTe,マチルダイトmatildite AgBiS2との間には部分固溶体を形成する。Agの含有量の高いものは銀資源として重要視される。立方晶系。立方体および立方体と八面体の組み合わさった自形結晶,あるいは塊状をなす。岩塩型結晶構造をもち{001}に完全なへき開が発達する。鉛灰色不透明で金属光沢をもつ。条痕黒色。モース硬度2.5~3,比重7.4~7.5で非常に重い。熱水性鉱脈鉱床,接触交代鉱床,黒鉱鉱床,ミシシッピ・バレー型鉱床などから産出する。北海道豊羽(とよは)鉱山,宮城県細倉鉱山,岐阜県神岡鉱山,秋田県小坂鉱山などが国内の代表的産地である(細倉鉱山は1987年閉山)。これら鉱床の酸化帯では,方鉛鉱の酸化二次鉱物として硫酸鉛鉱PbSO4,白鉛鉱PbCO3が産出することがある。galenaという名称は,〈鉛の鉱石〉を意味するラテン語を語源とする。
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化学辞典 第2版 「方鉛鉱」の解説

方鉛鉱
ホウエンコウ
galena, galenite

PbS.立方晶系,空間群 Fm3m,格子定数 a0 = 0.594 nm.単位格子中に4個の基本組成を含む.へき開{001}完全.硬度2.5.密度7.5~7.6 g cm-3.鉛の鉱石として重要である.しばしばZnS,Ag2S,Cu2Sなどを含み,ことにAgの鉱石としても利用される.純粋なものは融点1115 ℃.融点は硫黄の量によって大きく変化する.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「方鉛鉱」の意味・わかりやすい解説

方鉛鉱
ほうえんこう
galena

PbS 。の主要な鉱石鉱物。等軸晶系,比重 7.58,硬度 2.5~2.8。金属光沢,鉛灰色。劈開{001}に完全。正六面体または正八面体の自形結晶として産出することが多い。反射顕微鏡下では白色を呈し,反射能が高い。多色性,異方性ともになく,研磨時に形成される劈開による三角形の孔が特徴的に観察される。閃亜鉛鉱,重晶石などと共生し,各種熱水鉱床に普遍的に産出する。多くの場合銀を含んでいるので,銀採鉱のため採掘されることが多い。

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百科事典マイペディア 「方鉛鉱」の意味・わかりやすい解説

方鉛鉱【ほうえんこう】

最も重要な鉛の鉱石鉱物。組成はPbS。等軸晶系。結晶は六面体〜六八面体で,へき開は完全。硬度2.5,比重7.5〜7.6。断口は亜貝殻状。金属光沢をもち鉛灰色で条痕(じょうこん)も鉛灰色。接触交代鉱床,鉱脈,黒鉱などの鉱床中に産出,ほとんど常にセン亜鉛鉱を伴う。世界各地に産する。
→関連項目黒鉱

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