斜・傾(読み)ななめ

精選版 日本国語大辞典 「斜・傾」の意味・読み・例文・類語

ななめ【斜・傾】

〘名〙 (形動) (「なのめ」の変化したもの)
① 傾いているさま。垂直・水平でないさま。はす。なのめ。
※南海寄帰内法伝平安後期点(1050頃)一「錫杖は斜(ナナメ)に陜(わきはさ)むて、進止安祥にせよ」
※雁(1911‐13)〈森鴎外〉四「狭い露地を、体を斜(ナナメ)にして通らなくてはならない」
② 日月が中天を過ぎたこと。
※玉葉‐文治三年(1187)五月二四日「日脚已斜」
※読本・雨月物語(1776)青頭巾「日も斜(ナナメ)なれば」
③ 時刻などが半ばを過ぎて終わりに近いこと。特に、夕方の刻についていうか。さがり。
兵範記‐保延七年(1141)三月九日「申斜帰洛」
④ 普通であるさま。また、不十分であるさま。なのめ。→ななめ(斜)ならず
⑤ (「ななめに」の形で、「ななめならず」と同意に用いる) 並み一通りでないさま。なのめ。
※幸若・信太(室町末‐近世初)「子共もななめに悦ふで」
⑥ 普通でなく、わるいさま。
※胸より胸に(1950‐51)〈高見順〉六「日下さん、なんだか御機嫌斜めのようね」
[語誌](1)「なのめ」より遅れて、平安後期になって生じた語。当初は主に漢文訓読文に用いられたが、中世になって「なのめ」が勢力を失うに伴って「なのめ」の表わしていた意味用法を包含し優勢となった。
(2)「日葡辞書」には両形の見出しがあるが、「Nanomena(ナノメナ)」の項には「Nanamena(ナナメナ)と言う方がまさる」との記述がある。ただし程度を表わす④⑤⑥の用法は現代語では「御機嫌ななめ」といった慣用句以外すたれてしまった。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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