改・革(読み)あらためる

精選版 日本国語大辞典 「改・革」の意味・読み・例文・類語

あらた・める【改・革】

〘他マ下一〙 あらた・む 〘他マ下二〙
① 変更を加える。前からあるものを新しいものに取り替える。新しくする。変える。
類聚国史‐七五・歳次六・曲宴・延暦一四年(795)四月一一日「いにしへの野中古道阿良多米波(アラタメは)あらたまらむや野中古道」
源氏(1001‐14頃)澪標「やまひにしづみて返し申し給ひける位を、世の中かはりてまたあらため給はむに」
渋江抽斎(1916)〈森鴎外〉一〇「辰盛は通称を他人(たひと)と云って、後(のち)小三郎と改(アラタ)め」
② 改善する。過失や欠点などを、反省してなおす。よくする。
※源氏(1001‐14頃)帚木「しばし懲(こ)らさむの心にて『しかあらためむ』ともいはず」
徒然草(1331頃)一五七「卒尓(そつじ)にして多年の非をあらたむる事もあり」
威儀をただす。容姿や態度、言葉などをきちんとととのえる。
※大唐西域記巻十二平安中期点(950頃)「簪(かみさし)を抽き服を革(アラタメ)て」
※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)白川の関「古人冠を正し、衣装を改し事など、清輔の筆にもとどめ置れしとぞ」
④ 取り調べる。検査する。吟味する。
※正法眼蔵(1231‐53)伝衣「西天より伝来せる袈裟、ひさしく漢唐につたはれることをあらためて」
※魔風恋風(1903)〈小杉天外〉前「紙入の中検(アラタ)むれば、果して五十幾円の紙幣(さつ)がばらばらと落ちた」
⑤ 差し止める。禁止する。また、してはならないことをしないように監督する。
※浮世草子・好色五人女(1686)二「此女〈略〉、子おろしなりしが、此身すぎ世にあらためられて、今は其むごき事をやめて」
官職、所領などをとり上げ、他の人に替わらせる。改易する。
親元日記‐寛正六年(1465)八月二〇日「所詮禅盛法印依其科、既被御師職之上者」
⑦ 新しく別の機会をつくる。
※他人の顔(1964)〈安部公房〉灰色のノート「日をあらためるという手もあるにはあるが」
⑧ (他動詞形を使って文の調子をととのえたもの) =あらたまる(改)
※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)松島「月海にうつりて、昼のながめ又あらたむ」
[補注]「あらた(新)」から派生したもの。アラタは訓読特有の語であるが、アラタムは平安時代の和文にも広く用いられる。

あらたま・る【改・革】

〘自ラ五(四)〙
① 物事が新しくなる。古いものが新しいものに替わる。新しい段階に入る。入れ替わる。変化する。
万葉(8C後)一〇・一八八五「物は皆新(あらたまる)吉しただしくも人は古りゆくよろしかるべし」
※源氏(1001‐14頃)浮舟「年あらたまりてなにごとかさふらふ」
方丈記(1212)「人の心みなあらたまりて、ただ馬、鞍をのみ重くす」
② 物事が改善される。前よりもずっとよくなる。面目が一新される。
※枕(10C終)四九「『あらたまらざるものは心なり』とのたまへば」 〔楚辞離騒
③ ことさらに態度を整えてきちんとする。堅苦しい他人行儀の態度やことばつきになる。「あらたまって」の形で副詞的にも用いる。
※歌舞伎・幼稚子敵討(1753)二「ヲヲ、改った願とは何事じゃ」
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二「改って外出をする時を除くの外は」
④ (「革」の字の訓読語として) 病気が重くなる。容態が悪化する。危篤になる。
雪夫人絵図(1948‐50)〈舟橋聖一〉一「急に病気があらたまって、重態におちた」 〔礼記‐檀弓・上〕
⑤ 怠る。
※黒住教教書(1909‐20)歌集「あらたまる心許さず一筋に誠ばかりで悪を去る年」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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