面目(読み)めんもく

精選版 日本国語大辞典 「面目」の意味・読み・例文・類語

めん‐もく【面目】

〘名〙 (「もく」は「目」の呉音。「めんぼく」との違いは「めんぼく(面目)」の補注を参照)
① 顔かたち。顔つき。容貌
※妙一本仮名書き法華経(鎌倉中)六「面目(メンモク)(〈注〉オモテメ)、ことことく端厳にして、ひとのみんとねかふところたらん」
日葡辞書(1603‐04)「Menmocuno(メンモクノ) ヨイ ヒト〈訳〉顔立ちのよい人」 〔戦国策‐秦策一〕
② すがた。様相。また、外から見た様子。
※青年(1910‐11)〈森鴎外〉一一「夜の思想から見ると昼の思想から見るとで同一の事相が別様の面目(メンモク)を呈して来る」
③ おおもとになるもの。ある物事趣旨主張。おきて。
日葡辞書(1603‐04)「Menmocu(メンモク)〈略〉〈訳〉信条、定め。例、ワガ シュウノ menmocuua(メンモクワ) ジッカイ ナリ 〈訳〉我々の守る掟は、十戒である」
読本椿説弓張月(1807‐11)前「切ちらせしを面目(メンモク)にして、とく落給へかし」

めん‐ぼく【面目】

〘名〙 (「ぼく」は「目」の漢音)
① 人に合わせる顔。世人に対する体面や名誉。また、世間からの評価。めんぼくだま。めいぼく。めんもく。
※菅家文草(900頃)四・寄白菊四十韻「面目歓娯少、風塵悶乱煩」
※日葡辞書(1603‐04)「Menbocu(メンボク) ミニ アマル」 〔史記‐項羽本紀〕
[補注]日葡辞書では「めんぼく」と「めんもく」を区別し、前者は名誉の意、後者は顔、または趣旨・主張の意としている。この区別が確かにあったかどうかは明らかでないが、名誉の意の例は「めんぼく」となっているものが圧倒的に多い。

めい‐ぼく【面目】

〘名〙 =めんぼく(面目)
※宇津保(970‐999頃)楼上上「大じんどもの『この国のための、限りなきめいぼくをひろめん』と言ひ出だし立てし事を」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「面目」の意味・読み・例文・類語

めん‐ぼく【面目】

世間や周囲に対する体面・立場・名誉。また、世間からの評価。めんもく。「面目を保つ」「面目をつぶす」
物事のありさま。ようす。めんもく。「従来と異なった面目を呈する」
[類語](1メンツ名誉名聞めいぶん体面一分いちぶん沽券こけん声価信用信望しん信頼信任人望定評評判暖簾のれん覚え名望声望徳望人気魅力受け名声美名見栄みえ面皮世間体体裁肩身

めん‐もく【面目】

めんぼく(面目)」に同じ。「面目が立つ」
顔かたち。顔つき。〈日葡
おおもとになるもの。おきて。
雪折竹に本来の―を悟り」〈浄・国性爺

めい‐ぼく【面目】

めんぼく(面目)」に同じ。
「限りなき―を広めむと」〈宇津保・楼上上〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

普及版 字通 「面目」の読み・字形・画数・意味

【面目】めんぼく・めんもく

顔。体面。〔史記、項羽紀〕縱(たと)ひ江東の兄、れみて我を王とすとも、我何の面目ありて之れを見ん。~、獨り心に愧(は)ぢざらんや。

字通「面」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の面目の言及

【面子】より

…ただそれは世間的評価を意識した外面的対応であり,内面的自覚に基づく名誉とは異なる。中国では古くから面子,面目がとりわけ重視された。その理由として,一つには儒教の影響がある。…

※「面目」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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