押切(読み)おしきる

精選版 日本国語大辞典 「押切」の意味・読み・例文・類語

おし‐き・る【押切】

〘他ラ五(四)〙
① 物を押して切る。物を他の物に押しつけて力を入れて切る。〔文明本節用集(室町中)〕
※御伽草子・酒呑童子(室町末)「こしのさしぞへするりとぬき、ししむら四五寸をしきりて」
② 押切り印を押す。割り印を押す。
※財政経済史料‐四・官制・勘定所職制・勘定所分課・天明五年(1785)九月「其届を見て押切帳へ出立之月日を記押切、帰府之節右同断、并木銭帳之帰府之日を見て押切也」
③ 反対や無理など困難な条件を押しのけてする。
※仮名草子・浮世物語(1665頃)一「をしきるべき軍場(いくさば)をも逃げくづして」
④ 櫓(ろ)を押し続けて、波をのり切って船を進める。
※浄瑠璃・国性爺合戦(1715)千里が竹「千波万波をおしきって〈略〉もろこしの地にもつきにけり」
相撲で、相手を押して土俵の外へ出す。
※相撲講話(1919)〈日本青年教育会〉常陸、梅の爛熟時代「太刀の突張らうとする腕を押へ、右筈で何の苦もなく押切(オシキ)った常陸の貫祿もさることながら」
⑥ (「おし」は接頭語) 「切る」を強めていう。断ち切る。ぷつりと切る。
蜻蛉(974頃)中「汁にあへしらひて柚(ゆ)をしきりてうちかざしたるぞ」

おし‐きり【押切】

〘名〙
① 物を他の物に押しつけて切ること。力を加えてものを分断すること。
塵芥集(1536)九〇条「をしきりは本地に付へし」
② 馬のたてがみを二寸(約六センチメートル)位の長さに切りそろえたもの。
※弓馬故実(16C後か)「馬の髪は野髪・やりぼふし、二品なり〈略〉押切 又筥髪とも云ふ」
まぐさ、または壁土の中にまぜるわらなどをきざむ道具。くさきり。かいばきり。
真景累ケ淵(1869頃)〈三遊亭円朝〉一二「下にあったのは苆(すさ)を切る押切(オシキリ)と云ふもの」
④ 相撲で、相手を押して行って土俵の外に出すこと。
⑤ 「おしきりいん(押切印)」の略。〔地方凡例録(1794)〕
⑥ 自分の主張、考えなどを押し通すこと。
歌舞伎早苗鳥伊達聞書実録先代萩)(1876)六幕「男と見込んで頼まれた、爰(ここ)我慢の押切(オシキ)りと、怺(こら)へて残る預りの」

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