六訂版 家庭医学大全科 の解説
抗リン脂質抗体症候群(APS)
こうリンししつこうたいしょうこうぐん(APS)
Antiphospholipid syndrome (APS)
(膠原病と原因不明の全身疾患)
どんな病気か
血流中に抗リン脂質抗体が作られ、この抗リン脂質抗体が血液の凝固を促進し、
このために
症状の現れ方
血栓症とは、動脈あるいは静脈で、血液の塊である血栓が血管の内腔をふさぎ、この結果、血液の流れが途絶えるために生じる臓器の障害です。たとえば、動脈では脳梗塞、
通常、脳梗塞などは動脈硬化症に由来し、高齢者にみられます。しかし、抗リン脂質抗体症候群では、動脈硬化症の危険因子が認められない40代以下の若年者で、血栓症がみられます。また、女性では妊娠早期(10週以前)の習慣流産、子宮内胎児死亡、妊娠中毒症などがみられます。
抗リン脂質抗体症候群では、動脈血栓症のなかでは脳梗塞が約25%を占め、静脈血栓症のなかでは深部静脈血栓症が約75%と高頻度にみられます。ほかの臨床所見として、
検査と診断
血液検査では、抗カルジオリピン抗体、β2GPI依存性抗カルジオリピン抗体(抗β2GPI・カルジオリピン複合体抗体)、ループスアンチコアグラントなどの抗リン脂質抗体が陽性になることを特徴とします。
そのほかの検査所見として、血小板減少症、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)延長などの凝固能異常、血清
臨床所見として動脈あるいは静脈の血栓症、習慣流産など産科的疾患のいずれかが認められ、検査所見として、抗リン脂質抗体が6週間以上の間隔で2回以上陽性になることで診断されます。
治療の方法
血栓症の再発を防ぐ二次予防として、アスピリン(バファリン81㎎など)内服などの抗血小板療法、あるいはワーファリン内服による抗凝固療法が行われます。子宮内胎児死亡の予防としては、アスピリン内服とヘパリン製剤の皮下注射による抗凝固療法が行われます。
病気に気づいたらどうする
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報