憎・悪(読み)にくい

精選版 日本国語大辞典 「憎・悪」の意味・読み・例文・類語

にく・い【憎・悪】

〘形口〙 にく・し 〘形ク〙 心にかなわないさま、気に入らないさまをいう。
① きらいだ。うとましい。癪(しゃく)にさわる。憎らしい。
万葉(8C後)一・二一「紫のにほへる妹を爾苦久(ニクク)あらば人妻故に吾れ恋ひめやも」
※枕(10C終)二八「にくきもの、急ぐ事ある折に来て長言するまらうど」
② 見苦しい。みっともない。劣っている。
※宇津保(970‐999頃)あて宮「年老い、かたちもにくし、時なし。心のさがなきこと二つなし」
③ 不本意だ。気がひける。はしたない。
源氏(1001‐14頃)賢木「猶このにくき御心のやまぬに、ともすれば御胸をつぶし給つつ」
④ (すぐれていて、にくらしいほどであるの意から) 感心すべきさま。あっぱれだ。風流だ。「にくい着こなし」「にくいことをいう」など。
※保元(1220頃か)中「にくゐ剛の者哉。我が矢頃に寄せてひかへたり」
[補注]「にくし」には、本来、現代語の「にくい」ほど積極的な嫌悪の情が含まれていなかった。「枕草子九九」にみえる「賀茂の奥に、何さきとかや、たなばたの渡る橋にはあらで、にくき名ぞ聞えし」の「にくき名」は「一風かわっている名」とか「むずかしい名」とか解されている。
にく‐が・る
〘他ラ五(四)〙
にく‐げ
〘形動〙
にく‐さ
〘名〙

にくみ【憎・悪】

〘名〙 (動詞「にくむ(憎)」の連用形名詞化) 憎むこと。憎く思うこと。憎しみ憎悪。〔書陵部本名義抄(1081頃)〕
人情本・春色恵の花(1836)初「正しき身分にありけるが、継しき母の悪(ニク)みによりて、爺親(てておや)讒言なし」

にく・し【憎・悪】

〘形ク〙 ⇒にくい(憎)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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