悪童物語(読み)あくどうものがたり(英語表記)Lausbubengeschichten

日本大百科全書(ニッポニカ) 「悪童物語」の意味・わかりやすい解説

悪童物語
あくどうものがたり
Lausbubengeschichten

ドイツ作家トーマの自伝を交えた小説。1905年刊。勉強嫌いだが本来優しい心根の中学生が一人称でつづる12の物語。主人公はいわば落ちこぼれの少年ながら、いじけた気配などみじんもなく、思いつく限りのいたずらを堂々と実行する。何物にも惑わされぬ少年の目を通して、痛快無比の悪童ぶりの背後に、かえって大人の世界の偽善固陋(ころう)、いじましさとえせ権威が明らかにみえてくる。少年とその家族に向けられた温かいまなざしに作者の深い人間愛が感じられる。しかしこの小説の比類ない魅力は、方言を交え、少年らしく幾分ぎこちなくはあるがきわめて溌剌(はつらつ)としたその清新な語り口文体にある。

[吉安光徳]

『実吉捷郎訳『悪童物語』(『少年少女世界名作選5』1966・偕成社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「悪童物語」の意味・わかりやすい解説

悪童物語
あくどうものがたり
Lausbubengeschichten

ドイツの作家 L.トーマの小説。 1905年刊。副題「私の青春から」 Aus meiner Jugend。主人公の少年のいたずらによって,おとなたちの偽善が暴露されるさまがユーモアをもって描かれている。バイエルン郷土色の豊かな作品続編に『フリーダおばさん』 Tante Frieda (1907) がある。

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