息衝(読み)いきづく

精選版 日本国語大辞典 「息衝」の意味・読み・例文・類語

いき‐づ・く【息衝】

〘自カ五(四)〙
① 息をする。呼吸する。
古事記(712)中・歌謡鳰鳥(みほどり)の かづき伊岐豆岐(イキヅキ)(しな)だゆふ 楽浪道(ささなみぢ)を すくすくと 我がいませばや」
② 息をふきかえす。生きかえる。
※色葉字類抄(1177‐81)「活 イキツク イキカエル」
③ ためいきをつく。嘆息する。
万葉(8C後)八・一五二〇「青浪に 望みはたえぬ 白雲に 渧はつきぬ かくのみや 伊伎都枳(イキヅキ)居らむ かくのみや 恋ひつつあらむ」
④ 苦しそうに呼吸する。あえぐ。
※竹取(9C末‐10C初)「大納言〈略〉、いきつきふし給へり」
一息つく。ほっとする。
※宇治拾遺(1221頃)九「仏師、逃げのきて、いきつきたちて、思ふやう」
⑥ 生きつづける。存在し続ける。
美貌皇后(1950)〈亀井勝一郎〉飛鳥路「彼の体内に息づいてゐたのはアジアの血であった」

いき‐づかし【息衝】

〘形シク〙 (動詞「いきづく(息衝)」の形容詞化)
ため息が出るような気持だ。悲しく嘆かわしい。
※万葉(8C後)八・一四五四「波の上ゆ見ゆる小島の雲がくりあな気衝之(いきづかシ)相別れなば」
② 息苦しい。謡などで息がつづかない。
※曲附次第(1423頃)「息みじかく、いきづかしきうちにて云ひをさむれば、文字のすつることあるべからず」

いき‐づき【息衝】

〘名〙
① 呼吸。
※遠い日の海(1972)〈高井有一終章「静吾は自然に早穂子の息づきに足を合せて行った」
② 太く息をつくこと。はげしく息をつくこと。
※観智院本名義抄(1241)「喘 イキツキ」

いく‐づ・く【息衝】

〘自カ四〙 ためいきをつく。いきづく。
※万葉(8C後)一四・三四五八「なせの子やとりの岡道(をかぢ)し中だをれ吾(あ)をねし泣くよ伊久豆君(イクヅク)までに」

いきづくし【息衝】

〘形シク〙 「いきづかし」の上代東国方言。
※万葉(8C後)二〇・四四二一「我が行きの伊伎都久之可(イキヅクシカ)ば足柄の峰這(は)ほ雲を見とと偲はね」

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