おぼし‐め・す【思召・思食】
〘他サ五(四)〙
① (
はたから見た、その人の様子を示す語が上に来て) そういう顔つきをなさる。
※枕(10C終)二七八「『さまあしうて高う乗りたりとも、かしこかるべきことかは。〈略〉』とものしげにおぼしめしたり」
② 物事を理解したり、感受したりするために心を働かせなさる。
断定、
推量、
意志、
回想など種々の心の働きをいう。お思いになる。お考えになる。お感じになる。
※竹取(9C末‐10C初)「
子安貝とらんとおぼしめさば」
③ ある対象に心をお向けになる。愛しなさる。大事になさる。
※伊勢物語(10C前)四三「その
みこ、女をおぼしめして」
④ 他の
動詞の上に付けて、その動作主への
尊敬の意を加える。「おぼしめしいず」「おぼしめしたつ」「おぼしめしなげく」「おぼしめしやる」など。
[語誌](1)「おぼす」に「めす」が付いて
敬意を強めたとも、
上代の「おもほしめす」が変化したとも説かれている。「おぼしめす」は帝や院、
中宮などに限って用いられた。
(2)
天皇や
上皇の言葉の中に自分自身に敬意を払う、いわゆる自敬表現として用いられることがある。
おもほし‐め・す【思召・思食】
〘他サ四〙 (動詞「おもほす(思)」に尊敬の
補助動詞「めす」が付いてできたもの) 「思う」の
尊敬語。尊敬の度合は非常に高い。お思いになる。お考えになる。おぼしめす。
※
万葉(8C後)一・二九「いかさまに 御念食
(おもほしめせ)か〈略〉楽浪
(ささなみ)の
大津の宮に 天の下 知らしめしけむ」
[語誌](1)「
続日本紀‐
宣命」では、「聞こす」の場合は「聞こし召す」の形しかないが、「思ほす」の場合は「思ほし坐す」と「思ほし召す」の二種が見られる。オモホシマスの方が先行しているので、まず「思ほし坐す」が成立し、のち「聞こし召す」などの
類推から、「思ほし召す」が一般化していったものと考えられる。
(2)神や天皇の
行為に使われ、「思ほす」よりもさらに一段と敬意が高かった。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報