復活(キリスト教)(読み)ふっかつ(英語表記)anastasis ギリシア語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「復活(キリスト教)」の意味・わかりやすい解説

復活(キリスト教)
ふっかつ
anastasis ギリシア語
resurrection 英語
résurrection フランス語
Auferstehung ドイツ語

死者がよみがえること。キリスト教では、イエスが死んだのちに朽ちない体でよみがえったことをさし、キリスト教の重要な教理の一つ。『旧約聖書』で死人の復活についてはっきり述べているのは「イザヤ書」(26章19)と「ダニエル書」(12章2)である。『新約聖書』で死人の復活は、息を吹き返したヤイロの娘(「マルコ伝福音(ふくいん)書」5章21~23)やベタニヤのラザロ(「ヨハネ伝福音書」11章1~44)などの場合とは区別される。この場合はやがてまた死んで朽ち果てる体(同じ元の肉体)に蘇生(そせい)しただけである。死人の復活は、もはや死ぬことのない朽ちない栄光の体によみがえることである(「ロマ書」6章9、「コリント書I」15章42~54)。したがって『新約聖書』でいう復活は、ギリシア的人間観でいう、肉体と霊魂とが相反し、死によって霊魂が肉体から解放され、永続するという、肉体を蔑視(べっし)する思想に基づいたものではない。

 使徒パウロによれば、死人の復活はある(「コリント書I」15章12~22)。そしてその証拠にイエス・キリストは初穂として復活した(「コリント書I」15章20)という。キリストの復活の証拠は、聖書とキリストの預言(「コリント書I」15章4、「マタイ伝福音書」16章21)、空虚な墓(「ルカ伝福音書」24章1~9)、弟子たちへの顕現(「ヨハネ伝福音書」20章19~29、「コリント書I」15章5~8)である。キリストの復活の意味は、彼が神の子であることの証明(「ロマ書」1章4)であり、罪人のために十字架上でなされた贖罪(しょくざい)の完成であり(「使徒行伝(ぎょうでん)」2章32~36、「ロマ書」4章25)、またキリストを信じる者が復活して、いつも主とともにいるための保証である(「ロマ書」6章8、「テサロニケ書I」4章14~17)。

 復活には順序があって、最初はキリスト、次にキリストの再臨のときにキリストに属する者たちである(「コリント書I」15章23、「テサロニケ書I」4章14)。やがては不信者も復活するのであるが、それは、キリスト者が生命を受けるために復活するのに対し、不信者は審(さば)きを受けるために復活するのである(「ヨハネ伝福音書」5章29)。

野口 誠]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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