御座無(読み)ござない

精選版 日本国語大辞典 「御座無」の意味・読み・例文・類語

ござ‐な・い【御座無】

〘形口〙 ござな・し 〘形ク〙 (「ござある」の否定形)
[一]
① 「ない」「いない」の尊敬語。いらっしゃらない。おいでにならない。
太平記(14C後)二「内裏へ参て見るに、主上は御坐無て」
② 「ない」の丁寧語。ございません。
謡曲・安宅(1516頃)「定めて勧進帳のござなきことは候ふまじ」
[二] 補助形容詞「ない」の丁寧語。
※大観本謡曲・摂待(1483頃)「もし判官殿にては御座なく候か」
[語誌](1)発生期は、天皇に対する最高敬意として用いられたが、時代が下るに従い待遇する対象が事物事柄などに広がり、次第に丁寧語化した。②の挙例「謡曲・安宅」では、事物を主語としており、丁寧語化しつつある段階とみられる。
(2)室町末期以降は「ござある」に代わり、その縮約形「ござる」が一般化するのに呼応して、「ござない」から「ござる」の否定形「ござらぬ」へと交替する現象が見られる。
(3)尊敬語では、中世末期から近世初期の口語資料であるキリシタン資料(「天草本平家物語」など)、狂言台本(虎明本、虎清本、虎寛本など)などでは、すべて「ござらぬ」に限られ、「ござない」の例はない。
(4)丁寧語では、「ござない」が「ござらぬ」より優勢なものに、「天草本平家物語」「虎清本狂言」「醒睡笑」などがある。これに対し近世初期の外国資料「捷解新語」では、「ござらぬ」が優勢で、「ござない」は「御座なく候」などと候文で使用される程度でしかない。既に近世初期に「ござない」は、文語的性格を強めていたことが推測され、以後書簡用語として近代に至るまで広く一般に使用された。
ござな‐げ
〘形動〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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