強化食品(読み)キョウカショクヒン

デジタル大辞泉 「強化食品」の意味・読み・例文・類語

きょうか‐しょくひん〔キヤウクワ‐〕【強化食品】

ビタミン無機質アミノ酸などの栄養成分を添加・補強した食品

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「強化食品」の意味・わかりやすい解説

強化食品
きょうかしょくひん

食品の風味や色などを損なうことなくビタミンや無機質、アミノ酸などを加え、栄養強化を行った食品。1952年(昭和27)、栄養改善法によって制度化され、旧厚生大臣の許可を必要としたもので、正しくは栄養強化食品といった。強化食品は国民の栄養改善を目的にしたもので、米、押し麦、小麦粉などの10食品にビタミンB1カルシウムなど8種類の栄養素が強化された。代表的なものがビタミンB1、B2を添加した強化米であった。その後、国民の栄養摂取状況が改善され、特定の栄養素を補給した強化食品以外に、健康増進生活習慣病予防を目的として栄養成分の添加や調整をした食品が多く出回るようになった。1995年(平成7)の「食品衛生法及び栄養改善法の一部を改正する法律」により新しく栄養表示基準制度がスタートし、「強化食品」と称するものはなくなった。新制度では栄養成分や熱量に関して「高」「低」「無」などの表示をする場合の基準を定め、主要な栄養成分の含有量や熱量も表示することを義務づけている。

河野友美

由来

1936年、アメリカで子供のくる病防止の目的で牛乳にビタミンDを加えたのが食品栄養強化の始まりである。40年、イギリスでは小麦粉にビタミンB1を加えることが実施された。日本では49年(昭和24)ごろから取り上げられ、52年に「強化食品に関する勧告」が出され、また、同年、栄養改善法が公布されるに及んで具体化した。同法は、国民の栄養調査および指導、集団給食の栄養管理などとともに、「特殊栄養食品」の普及を定めた。「特殊栄養食品」には、強化食品と、妊産婦・授乳婦用粉乳などがあった。強化食品とは、各指定食品について設けられた強化基準量を含有し、旧厚生大臣の許可を受けたものをいい、これらを満たしたものは、強化内容や分量、栄養の一般分析値を表示し、「厚生省許可・特殊栄養食品」の証票を標示して市販することができた。この制度自体は廃止されたが、栄養を強化することはその後も行われている。強化する栄養素はビタミンB1とカルシウムが中心で、強化した食品の代表的なものが強化米である。栄養素の強化はビタミンB1をはじめB2、B6ナイアシンなどビタミンがおもなものと、カルシウムがおもなものとがある。強化米は、洗米のとき強化ビタミンが溶出して損失しないよう、水に不溶性のビタミンを使用したり、米の表面に薄い膜をコーティングしたりしている。炊飯時に通常の米に混合して使用する。そのほか、カルシウムを強化したビスケットウェファー(ウエハース)などの菓子類がある。

[河野友美]

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改訂新版 世界大百科事典 「強化食品」の意味・わかりやすい解説

強化食品 (きょうかしょくひん)
enriched food
fortified food

食品本来の色や風味などを変えることなく栄養補強された食品。人類は昔は収穫した食物にほとんど手を加えずに,食品としてとっていたが,近代になって産業が発達するとともに,精製された食物をとるようになった。例えば,小麦は精粉により胚芽部が除かれ,米も搗精(とうせい)によりやはり胚芽部が除かれてしまう。ところが,この除かれる部分にビタミンなどの栄養素が多く含まれている。また,食品を殺菌のために加熱すると,熱に弱い栄養素は破壊される。いっぽう,合成化学の進歩や発酵技術の進歩により,複雑な構造をもつビタミン類も安価に大量に製造できるようになった。そこで,現代の食生活で不足する微量栄養素を,食物に添加して補うことが考えられるようになった。この食物に栄養素を添加することを栄養強化fortificationという。栄養強化は,アメリカでは1936年に,イギリスでは40年に,日本では52年に,いずれも国の政策として行われるようになった。日本においては,同年に栄養改善法が施行され,厚生省が強化食品の製造の許可を行うようになった。許可されたものには〈特殊栄養食品〉のマークがつけられている。日本で行われている強化食品は,米,みそ,豆腐,牛乳,菓子類などである。(1)強化米 搗精により失われるビタミンB1を強化する。B1はデンプンの体内での代謝時に必要なビタミンで,とくに強化の必要性が高い。白米ばかり食べていると脚気になるのはB1不足が原因である。B1とB2を表面に被覆した米粒を,白米200粒に1粒の割合で混ぜる。(2)強化小麦粉 小麦はアミノ酸の一種のリジンが不足している。人間の成長期のリジン不足は発育を遅らせることから,学校給食用パンにリジンを強化することが行われる。しかし,日本では1980年代になって消費者の間で,国の政策として栄養強化を行うことに対する批判が起こり,栄養強化は減少の方向にある。
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百科事典マイペディア 「強化食品」の意味・わかりやすい解説

強化食品【きょうかしょくひん】

食品本来の色や風味をそこなうことなくビタミンやミネラルなどの栄養素を加え,栄養価を高くした食品。栄養改善法によって規則づけられている。米,小麦粉,みそ,醤油,乳製品,菓子,ジュース類などに対し,ビタミンB1,B2,C,A,Dやカルシウムなどを強化する。ときに鉄分,必須(ひっす)アミノ酸も加えられる。
→関連項目栄養補助食品

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「強化食品」の意味・わかりやすい解説

強化食品
きょうかしょくひん

食品の本来の風味や色などを変えることなく,ビタミンやミネラルまたはアミノ酸のような微量栄養素を食品に加えて栄養増強を行う目的でつくられた食品。アメリカでは 1936年以来取上げられ,イギリスでは 40年以来,日本では 52年以来実施され,代表的なものは白米,小麦粉,味噌,マーガリン,魚肉ソーセージなどである。近年は食生活全般の向上に伴い,あまり用いられなくなっている。

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栄養・生化学辞典 「強化食品」の解説

強化食品

 栄養価を高めるため単数もしくは複数の栄養素を添加した食品.製品は栄養改善法によって許可される.

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世界大百科事典(旧版)内の強化食品の言及

【食品】より

… なお,以上のほかに,〈栄養改善法〉によって規定された特殊栄養食品がある。特殊栄養食品は,強化食品ならびに特別用途食品に大別される。強化食品には米,押麦,小麦粉,食パン,ゆでめん,乾めん,即席めん,みそ,マーガリン,魚肉ハム,魚肉ソーセージなどがあり,特別用途食品には,低ナトリウム食品,低カロリー食品,低タンパク食品,無乳糖食品,アレルギー疾患用食品,糖尿病食調整用組合せ食品,肝臓病食調整用組合せ食品などがある。…

※「強化食品」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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