張訴(読み)はりそ

精選版 日本国語大辞典 「張訴」の意味・読み・例文・類語

はり‐そ【張訴】

〘名〙 江戸時代老中屋敷役所の門などに、訴状をひそかに張りつけること。また、その訴状。
牧民金鑑‐二〇・越訴・文化一一年(1814)六月申渡書付「各役所陣屋等え張訴捨訴有之節」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「張訴」の意味・わかりやすい解説

張訴
はりそ

江戸時代、越訴(おっそ)の一形態。訴訟状を奉行(ぶぎょう)所や代官所、訴えたい人物の屋敷の門などに張って訴える。一般の訴訟状様のものに上封を付して張り付ける場合と、訴訟の内容を世間に公表してその採用を強制したり、不正を弾劾するために訴訟状の内容が通行人の目にとまるように開示して張り出すことが行われた。また張札として板札に訴訟状を書くこともあった。近世中期以後、捨訴(すてそ)(捨文(すてぶみ))とともに盛行したため、幕府はこれを禁止し、訴訟状を開封せず焼却することにした。

[白川部達夫]

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世界大百科事典(旧版)内の張訴の言及

【越訴】より

…しかし,村役人が村の利益を代表して越訴することは17世紀の百姓一揆の特徴となり,18世紀にはいると惣百姓が直接に集団で越訴する強訴(ごうそ)が増加する。幕府は,1711年(正徳1)に巡見使への出訴,21年(享保6)に目安箱への箱訴を認めて越訴の特例をつくるとともに,徒党強訴をはじめ駕籠訴(かごそ),駈込訴(かけこみそ),捨訴(すてそ),張訴(はりそ)などの順を踏まない直訴行為を厳禁した。【深谷 克己】。…

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