弗(漢字)

普及版 字通 「弗(漢字)」の読み・字形・画数・意味


5画

[字音] フツ・ヒツ
[字訓] もとる・はらう・あらず

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 象形
縦の木二三本をつかね、縄でまきつけた形。曲直のあるものを強くたばねることをいう。〔説文〕十二下に「(もと)るなり」とし、の省文に従って丿(へつ)・(ふつ)する意であるとするが、字はとは関係がなく、枝をまげて強くたばねるので「払戻(ふつれい)」の意があり、拂(払)の初文とみてよい。〔詩、大雅、生民〕「以て子無きを弗(はら)ふ」は祓去の意。不・勿(ふつ)などと同じく否定詞に用いるのは仮借金文の〔叔夷(しゆくいはく)〕に「敢て戒(けいかい)し、乃(そ)の司事を虔(けんじゆつ)せ弗(ず)んば不(あら)ず」「休命に對揚せ不(ず)んば弗(あら)ず」のように用いる。

[訓義]
1. もとる、ねじる。
2. おさめる、はらう、きよめる。
3. のぞく、さる、とる。
4. 怫(ふつ)と通じ、うれえる。
5. 仏と通じ、ほのか、にかよう。
6. 不・勿と通じ、ず、あらず、なし。
7. 弼(ひつ)と通じ、たすける。

[古辞書の訓]
名義抄〕弗 セズ・マジ・ザル・アラズ・モトル・タガフ・タチマチ・ヲサム 〔字鏡集〕弗 ヲサム・タチマチ・モトル・アラハス・タガフ・ナシ・シム・ハシ・セズ

[声系]
〔説文〕に弗声として費・佛(仏)・髴・・怫・沸・など二十字を収める。(ふつ)はもつれる意。おおむね内から外にあらわれ出る感情や力、また、ほのかな状態のものをいう形況の語。非・弗の意をもつものが多い。

[語系]
弗piutは不・否piuと声近く、否定詞に用いる。否定詞にはなお非・勿・無・(亡)・(微)・蔑などを用いるが、本来の否定詞というべきものはない。は屍骨、は暮夜、・蔑(べつ)は媚(巫女)を殺してその呪力を微(な)くする形で、いくらか否定的な意味がある語である。弗も束ねてもとらす意である。

[熟語]
弗鬱弗学弗乎弗康弗叔弗祥弗是弗庭弗靡弗弗弗与弗予
[下接語]
黜弗・

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報