日本大百科全書(ニッポニカ) 「座浴」の意味・わかりやすい解説
座浴
ざよく
水治療法の一つで、下腹部、臀部(でんぶ)を温湯または薬液に入れて洗い温める方法をいう。腰湯(こしゆ)ともいわれ、日本では古くから行われていた方法である。近年は各家庭に浴室、シャワーが普及したので、清潔のためにはシャワーで洗うことが多くなったが、温めるという点では座浴のほうが効果的である。骨盤内の諸疾患、とくに痔疾(じしつ)(日本人には多い)、肛門(こうもん)およびその周囲に創(きず)などがある場合、創部の清潔、疼痛(とうつう)緩和、肛門括約筋の緊張緩和を目的として座浴が用いられる。また、下痢、裏急後重(りきゅうこうじゅう)(腹しぶり)、排尿痛、性器の炎症時などのほか、長期間入浴できない病人の陰部の保清のためにも行われる。なお、薬液を用いる場合は、医師の指導を受けなければならない。温湯の温度は38~40℃くらいで、時間は15~20分間ほどがよい。医師などから指示された場合は、その基準に従うことがたいせつである。施行にあたっては、寝衣をぬらさないようにする、寒気をおこさないようにする、恥ずかしさを感じさせないようにする等の配慮が必要である。時間が長いときは適宜差し湯をする。疲れやすいときや疼痛が激しいときは、たらいの中にゴム製の円座を置いて、その上に腰を下ろして行うとよい。なお、痔疾などで薬剤の塗布、坐薬(ざやく)の挿入が必要である場合は、座浴のあとで行うようにする。
[山根信子]