常陸大宮(市)(読み)ひたちおおみや

日本大百科全書(ニッポニカ) 「常陸大宮(市)」の意味・わかりやすい解説

常陸大宮(市)
ひたちおおみや

茨城県北部にある市。2004年(平成16)、那珂(なか)郡大宮町に山方町(やまがたまち)、美和村(みわむら)、緒川村(おがわむら)、東茨城郡の御前山村(ごぜんやまむら)が編入して市制施行、常陸大宮市となった。市域には、久慈(くじ)川と那珂川が流れ、八溝(やみぞ)山地と久慈山地をもつ山間地域、沿岸低地、河岸段丘、丘陵山地よりなる。西部は栃木県に接する。JR水郡(すいぐん)線、国道118号、123号、293号が通じる。中世には長く佐竹氏が支配し、近世は水戸藩領となる。山方は南郷(なんごう)街道の宿場として、また久慈川と那珂川の各水運を結ぶ河岸町(かしまち)として栄えた。伊勢畑には下野(しもつけ)薬師寺別当(べっとう)に左遷された道鏡(どうきょう)にまつわる伝説が残り、那珂川北岸の野口には水戸藩の郷校(ごうこう)時雍館(じようかん)跡がある。

 近世以来、辰ノ口江堰(たつのくちえぜき)、岩崎江堰、小場(おば)江堰などの水利灌漑(かんがい)施設で水田が開けた。ナス、ネギ、コンニャクソバシイタケなどの野菜栽培や、養鶏、肉牛飼育が盛ん。山間部では林業が中心。砕石砂利木材木炭和紙の産もある。奥久慈の入口として交通上の要地であり、商業も発達。1960年代以降、電機、精密機械などの機械工業が増加し、南部の若林に水戸北部中核工業団地も造成(1991)され、さらに企業が進出した。農林水産省の放射線育種場(現、農業生物資源研究所放射線育種場)がある。なお、伝統的に手漉(す)き和紙づくりが盛んであり、江戸時代にはコウゾをつくり和紙を多く産した。とくに「西の内紙」は、工芸技術として国の選択無形文化財に指定され、舟生(ふにゅう)には「紙のさと和紙資料館」がある。また、諸沢(もろざわ)は、江戸後期、コンニャクの粉末化技術を開発した中島藤右衛門(なかじまとうえもん)の出生地。奥久慈県立自然公園、御前山県立自然公園に属し、御前山青少年旅行村、大宮自然公園、辰ノ口親水公園がある。ほかに、プラネタリウム、森林科学館、アスレチックコースなどを備えた多目的施設「パークアルカディア」、キャンプ場、淡水魚館などがある。面積348.45平方キロメートル、人口3万9267(2020)。

[編集部]


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