帯金具
おびかなぐ
革または布製の帯の表面につけた金、銀、金銅製の飾り金具。中国では戦国時代に帯留金具としての帯鉤(たいこう)が普及し、魏晋南北朝時代になると、北方騎馬民族の胡服(こふく)の流入とともに帯を金具で飾る風習が広まる。官人の服制に組み込まれた晋式帯金具は、その代表例である。帯に鋲留めで取り付ける金具は、鉸具(かこ)、銙(か)、帯先金具、鉈尾(だび)からなり、それぞれに施された透彫り文様は、竜、虎、鳳凰、唐草文などがある。中国東北部の遼寧省西部に拠点をおいた鮮卑(せんぴ)族の三燕(さんえん)文化(4~5世紀)では、中国中原(ちゅうげん)地方から直接もたらされた帯金具と、それを模倣し独自の文様で飾った帯金具も使用された。朝鮮半島の新羅では、唐草文の帯金具が主流だが、中国の帯金具からの影響を受けた竜文透彫り帯金具も、新羅で製作された。古墳時代の日本列島では、4世紀中葉と末に加耶(かや)地域との交流を通じて中国の晋式帯金具が、5世紀中葉から後半には新羅の竜文帯金具がもたらされている。ただ、日本での帯金具の本格的な普及は、律令期の役人の服制に対応した銙帯(かたい)(金属製または石製)が採用されて以降のことである。
[千賀 久]
『町田章著「古代帯金具考」(『考古学雑誌』56-1)』
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帯金具
おびかなぐ
革または布の帯の表面に金,銀,金銅などでつくった飾り。か帯ともいう。ユーラシア大陸の騎馬民族が主として用いたという。中国では隋・唐時代の環帯というのがこれにあたる。朝鮮の三国時代の墳墓から多く出土し,日本の古墳からも出土している。奈良時代以降の石帯もこれらのあとをうけたものであろう。工芸的にはすぐれたものがあり,考古学的にも文化の関連を研究する重要な資料になっている。
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帯金具【おびかなぐ】
中国,朝鮮,日本の古墳から出土する,布や革の帯を着用する時に用いた装飾金具。表面につける【こ】板(こばん),両端を締める【か】具(かこ),鉈尾(だび)など。日本の古墳からは唐草文の透彫や,獣面を打ち出したものなどが出土している。
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おびかなぐ【帯金具】
元来,衣服の上から腰に巻いて結ぶのが帯であり,ヨーロッパでは新石器時代の終りころ,一端に環,他端に鉤をつけて留めることがおこなわれるようになった。帯はふつう皮革ないし布製なので例外的にしか残らないが,環と鉤が残れば帯の存在を物語る。当初は骨角製で,青銅器時代になって金属製となった。鉄器時代初期のハルシュタット文化A期では,円盤形の先に環を付したものと,小型の円盤の一端に舌をつけてこの先を鉤状に曲げた組合せが普及している。
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