市松人形(読み)イチマツニンギョウ

デジタル大辞泉 「市松人形」の意味・読み・例文・類語

いちまつ‐にんぎょう〔‐ニンギヤウ〕【市松人形】

木くずを練り固めた胴に首を据え、手足縮緬ちりめんでつないで動くようにした人形。江戸中期の歌舞伎俳優の佐野川市松をかたどったとも、市松という孝子の姿になぞらえたともいう。大和やまと人形。いちまつ。いちま。

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精選版 日本国語大辞典 「市松人形」の意味・読み・例文・類語

いちまつ‐にんぎょう ‥ニンギャウ【市松人形】

〘名〙 (歌舞伎役者の佐野川市松をかたどったものとも、市松という孝子になぞらえたものともいう) 木、または鋸(のこぎり)の屑(くず)を膠(にかわ)で練りかためた胴に首をはめ、四肢を白ちりめんでつぎ合わせて動くようにした人形。天保一八三〇‐四四)以降の流行で、腹部を押すと泣き声を発するように笛を仕込んだものもある。関西では「いちま」と呼ぶことが多く、また、人形類の総称ともする。〔随筆守貞漫稿(1837‐53)〕

いちま‐にんぎょう ‥ニンギャウ【市松人形】

〘名〙 「いちまつにんぎょう(市松人形)」の上方での称。
浄瑠璃伊賀越道中双六(1783)五「持遊びの市松(イチマ)人形」

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世界大百科事典(旧版)内の市松人形の言及

【着せ替え人形】より

…日本では江戸初期から木,練り物製などの裸人形を買い,家庭で衣服を縫って着せてふだんの手遊びに用い,雛祭には雛壇に飾ったりした。関西では市松(いちま)人形の名で少女たちに愛好された。明治以降のやまと人形(衣装人形)のなかにも着せ替え遊びのできるものがある。…

【佐野川市松】より

…代表的な舞台は,1741年(寛保1)江戸中村座で演じた《高野心中》の粂之介で,その衣装に用いた石畳(いしだたみ)の模様は〈市松模様〉として今日に残る。〈市松(いちま)人形〉の名も顔を似せて作ったことに由来する。浮世絵の好画材であり,女性の人気には絶大なものがあった。…

【人形】より

…家庭における人形に裸人形があり,これは木彫や練物や張子細工に胡粉(ごふん)を塗り仕上げたもので,手足を動かせるようになっている。これは市松人形ともいった。これを買ってきて家庭で腹掛けや衣装を縫って着せた。…

【やまと人形】より

…江戸時代初期からたいてい裸のままで売られたので裸人形と称し,やがて手の動くものから,さらに三つ折れ式に腰や膝頭,足首などが折れる精巧なものが作られ三つ折れ人形などと称した。これに衣装を着せたものを江戸ではただ〈人形〉,京坂では〈市松(いちま)人形〉とも呼んだ。大正期ころまでは家庭で衣装をつくることが多かったが,現在ではほとんどが衣装付きである。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」