巻・捲(読み)まく

精選版 日本国語大辞典 「巻・捲」の意味・読み・例文・類語

ま・く【巻・捲】

[1] 〘他カ五(四)〙
① 物のまわりにぐるぐるとからませる。まといつかせる。巻きつける。
※古事記(712)中・歌謡「やつめさす 出雲建(いづもたける)が 佩ける太刀 黒葛(つづら)(さは)麻岐(マキ) さ身なしにあはれ」
② 布、また紙などを、一端を軸として、くるくると丸くする。また、丸くたたみこむようにする。
※古事記(712)序「旌(はた)を巻(まき)(ほこ)を戢めで、儛ひ詠ひて都邑(みやこ)に停りき」
③ 物や場所のまわりをぐるりと取り囲む。
※大日経義釈延久承保点(1074)五「縁を巻(マイ)たる沙糖の」
④ しまう。収納する。納めておく。
※仮名草子・伊曾保物語(1639頃)中「あまたの人の中をひ出て能道を示すといへ共、用いずはまひて懐にす」
連歌俳諧で、連歌や連句を行なうのをいう。
芭蕉の一句(1963)〈唐木順三〉「『夏の月』の歌仙が巻かれたのは元祿三年の夏」
⑥ 物を、それにつけた綱などを軸にまといつかせて、上に上げる。巻き上げる。
※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)象潟「此寺の方丈に座して簾を捲ば」
⑦ 渦(うず)状を示す。巻いた結果渦状になる。「渦を巻く」「とぐろを巻く」など。
⑧ ねじやぜんまいなどを、ねじり回してしめる。
※内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙〉九「けふは色々と事にまぎれて、ツイ巻(マキ)忘れて」
⑨ (「舌を巻く」の形で用いて) 驚き、恐れ、あるいは感嘆などでことばも出ないさまをいう。
⑩ (「くだを巻く」の形で用いて) 酒に酔って、とりとめのないこと、不平などをくどくどと言う。
⑪ (「証文を巻く」の形で用いて) 書かれた事柄、権利などを無にする。放棄する。
腕くらべ(1916‐17)〈永井荷風〉二二「証文位はきれいに巻いてやらうかと思ってゐるんだ」
⑫ 登山で、急な登りや難所を避けて山腹を迂回する。
※登山技術(1939)〈高須茂〉山稜と渓谷「どうしても登れない場合は、藪くぐりを覚悟で高く捲かなければならない」
[2] 〘自カ五(四)〙
① 渦巻状になる。うずまく。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)一〇「眉間の毫相は常に右に旋(マケ)り」
② たちこめた霧などがおさまる。
※文華秀麗集(818)上・奉和春日江亭閑望〈巨勢識人〉「潮生孤嶼没。霧巻巨帆懸」
③ (「息がまく」の形で用いる。「息がはげしくて渦巻状になる」意から) 息がはずむ。はげしい呼吸をする。〔日葡辞書(1603‐04)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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