山東(省)(読み)さんとう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「山東(省)」の意味・わかりやすい解説

山東(省)
さんとう / シャントン

中国、華北地区東部沿岸の省。略称は魯(ろ)。面積15万6700平方キロメートル、人口8975万4623(2000)。省都は北西部の済南(さいなん/チーナン)市で、そのほか青島(チンタオ)、淄博(しはく/ツーポー)など17地区級市があり、それらのなかに31県級市、61県を含む(2001現在)。

 西部は黄河(こうが/ホワンホー)下流の広い沖積平野で、華北(かほく/ホワペイ)平原の一部をなす。黄河は北西部を北東流し渤海(ぼっかい/ポーハイ)に注ぐが、古来、何度も河道を変えたため、長い堤防状の旧河道が発達する。また、魯運河すなわち大運河が北上し、南には南陽湖、独山(どくざん)湖、微山(びざん)湖など一連の湖がある。中部は泰(たい)山、沂(ぎ)山、蒙(もう)山などの魯中山地で標高は平均500メートル、最高峰泰山は1524メートルである。小清河(しょうせいが)、泗河(しが)、沂河などの水源地でもある。石灰岩が覆うため、頂上の平坦(へいたん)な山地や済南の突(ほうとつ)泉などのカルスト泉がみられる。東部は山東(膠東(こうとう))半島で北東に延び、渤海と黄河を分ける。標高500メートル以下の起伏の緩やかな丘陵が続き、山間盆地も多い。海岸線は複雑で湾が発達する。西部は夏高温、冬寒冷で降水量がやや少なく、春は乾燥傾向が強い。中部、東部は比較的温暖湿潤で、とくに半島南部は温和な海洋性気候を示し、保養地もある。

 農業はほとんどが小麦、コウリャンを柱にした二年三作制である。黄河の旧河道ではラッカセイや大豆の一年一作制もみられる。商品作物はワタ、タバコが主である。ワタは西部の徳州(とくしゅう/トーチョウ)、聊城(りょうじょう/リヤオチョン)市などが黄河流域ワタ作地帯の主産地である。タバコは益都(えきと)が栽培中心地で、河南(かなん/ホーナン)省に次ぐ生産量を誇る。東部の山間盆地では柞蚕(さくさん)による繭(まゆ)生産やナシ、リンゴなどの果樹栽培も盛んである。ただ、西部の平原部では、冠水、土壌のアルカリ、塩類土化や干害を受けやすいため、堤防工事や土壌改良が絶えず行われている。沿岸部では漁業や製塩が活発で、青島、煙台(えんだい/イエンタイ)など良港が多い。淄博や棗荘(そうそう/ツァオチュワン)では炭田が分布し、粘結性炭が製鉄に利用される。金嶺鎮(きんれいちん)、即墨(そくぼく)などの鉄、招遠(しょうえん)の金のほか、ボーキサイトなど鉱物資源は多い。淄博の陶磁器、ガラス、済南の刺しゅうなどの伝統的手工業や在来軽工業に加え、青島、済南、淄博などでは、鉄鋼、機械などの近代工業が発達している。

 春秋時代には魯(ろ)や斉(せい)など、戦国時代には斉や楚(そ)などに属し、古くから開発された。金代に初めて「山東」の名が使われ、東路、西路が置かれた。清(しん)代には山東省になったが、1898年にドイツが膠州(こうしゅう/チヤオチョウ)湾を租借、のち日本が占領し、半植民地化の直接の舞台となった。京滬(けいこ)、膠済(こうさい)鉄道を基礎に支線や自動車道が四通八達し、航路も開けている。

[駒井正一]

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