富鉱体(読み)ふこうたい(英語表記)ore shoot

日本大百科全書(ニッポニカ) 「富鉱体」の意味・わかりやすい解説

富鉱体
ふこうたい
ore shoot
chute

鉱床中で採掘対象元素あるいは化合物の品位がとくに高く、規模の大きい部分を富鉱体という。富鉱体の位置は地質構造に大きく規制されている。たとえば、鉱脈鉱床では、2枚の鉱脈の交会部(日本古来の鉱山用語では落合直(おちあいなお)り)、交代鉱床では原岩と鉱化流体の通路の交会部や帽岩(ぼうがん)とよばれる不透水性の岩石の下、層準規制鉱床では褶曲(しゅうきょく)の軸部や1枚の鉱床が重ね合わされた部分に形成される。層状含銅硫化鉄鉱床(キースラーガー型鉱床)では富鉱体の延長が周囲の褶曲軸の落しと平行になるので、褶曲構造の解析が探鉱上重要である。斑(はん)岩銅鉱床が風化作用を受けると、地表風化作用および地表水による酸化作用を受けた酸化帯が、その下に酸化帯から溶出した金属の硫酸塩が還元されて二次硫化鉱物として沈殿した還元帯が形成される。この還元帯に銅に富む硫化鉱物が濃集して二次富化帯が形成される。

[正路徹也]

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岩石学辞典 「富鉱体」の解説

富鉱体

鉱物が十分に濃集してその抽出が有用であるような断面部分.鉱床の内部では経済性のある鉱物は一様には分布しておらず,ある断面に鉱床が濃集する傾向がある.[Lindgen : 1928, Bateman : 1952].富鉱体の形によってボナンザ(bonanza),鉱條,鉱筒,鉱巣,落とし,落合直り,などの区別がある.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「富鉱体」の意味・わかりやすい解説

富鉱体
ふこうたい
ore shoot

鉱床の一部が特に発達した部分,あるいは有用鉱物の含有率が高くなっている部分をいい,日本古来の鉱山用語の「直 (なお) り」にあたる。特に規模の大きな富鉱体はボナンザとも呼ばれる。

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