室津湊(読み)むろつみなと

日本歴史地名大系 「室津湊」の解説

室津湊
むろつみなと

[現在地名]室戸市室津

室津川河口にある。古くは河口が深く湾入しており、室津川の川港であったらしい。天正一五年(一五八七)の室津地検帳に「池ノマワリ」「池ノフチ」一一筆が記されるが、その池こそ古代の室津湊といわれ、現在も原池はらいけ地名が残る。室戸岬一帯は地震の度に隆起を重ねており、当時は河口から入江状に水路が続いていたと考えられる。

国司の任を終えた紀貫之は、承平五年(九三五)一月帰京の途中に室津湊に寄港するが、一一日朝奈半なは(現安芸郡奈半利町)を発って翌日奈良志津ならしづ(現浮津の奈良師)を経て当地に着いた。以後日和を待って停泊、一七日に一度出航するが黒雲におびえて再び室津に帰っている。湊の様子は不明であるが、一八日条には「このとまりとほくみれども、ちかくみれども、いとおもしろし」とある。二一日にやっと出港するが、この時「つかはれんとてつきてくるわらはあり、それがうたふふなうた」として「なほこそくにのかたはみやらるれ わがちちははありとしおもへば かへらや」と書留めている。また「今昔物語集」(巻一七)に載る室津津照しんしよう(津寺)地蔵菩薩の霊験譚の結びに「其ヨリ後、其ノ津ヲ通リ過ル船ノ人、心有ル道俗・男女、此ノ寺ニ詣デヽ(下略)」とあるのをみても、古くより室戸岬を回る船にとって必須の日和待ちの港であったことは疑いない。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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