大人・卿(読み)うし

精選版 日本国語大辞典 「大人・卿」の意味・読み・例文・類語

うし【大人・卿】

〘名〙
① 土地を領有する人や事物を主宰する人を尊敬していう語。
書紀(720)神代下「故、仍りて其の子大背飯三熊之大人を遣す。〈大人、此をば于志(ウシ)と云ふ〉」
② 人を尊敬していう語。
(イ) 貴人、富者や父親などを尊敬していう語。
※読本・雨月物語(1776)蛇性の婬「こは大人(ウシ)の弟子(をとご)の君にてます」
(ロ) 師匠、学者や先人などを尊敬していう語。先生。
※歌のしるべ(1828)「序に、柿本の大人を歌の聖なりといひ、山部の大人を歌にあやしく妙なりと云ひし」
③ (転じて、代名詞的に用い) 相手を尊敬して呼ぶ語。
※書紀(720)用明二年四月(図書寮本訓)「大連に語りて曰く、今群臣(まちぎみたち)(ウシ)を図る〈略〉といふ」
[語誌](1)①の挙例「書紀‐神代下」で「大人」があててあるように、尊称が本来の意味で、その地位にある人も指すようになったものか。「ぬし」とおそらく同源であるが、「うし」の上代の単独例は少なく、動詞「うしはく」の形であらわれることが多い。
(2)中古から中世にかけて用例がなく、近世に復活して主に文学方面に用いられる。国学者たちが復古趣味によって古典から再生させた語の一つである。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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