夜須川村（読み）やすがわむら

日本歴史地名大系

夜須川村
やすがわむら

• 高知県：香美郡
• 夜須町
• 夜須川村

[現在地名]夜須町夜須川・添地（そえじ）・国光（くにみつ）

夜須川上流の山村で、下流にある夜須村の枝郷。東は安芸郡馬（うま）ノ上（うえ）村（現芸西村）、北東は東川（ひがしがわ）村（現香我美町）の枝郷道家（どうけ）村（現芸西村）、同羽尾（はお）村、西は東川村。夜須川の沖積平野は南端の添地までで、それより上流は谷沿いの棚田を耕す。山村にしては山畠が少なく水田の比率が高い。

中世は大忍（おおさと）庄に属し、暦応元年（一三三八）一一月一〇日付の文書（蠧簡集）に「大忍庄東河内夜須川京慶名事、如元可令安堵也、於御年貢御公事者任先例無懈怠可勤仕之状如件」とみえる。建武中興前後の変動が当地に波及し、動揺を押えるために安堵状が発給されたものと思われるが差出人など不明。当時夜須川は東川分で、「京慶名」は天正一六年（一五八八）の大忍庄地検帳に「キヤウケウ」とある。現在の字京家（きようけ）付近であろう。同名については永享一〇年（一四三八）にも、夫役以下の事に関して違乱に及ぶ者があり、「地下以連判歎申上者早可被止彼」との広瀬鶴若宛・宗浄署名の執達状（蠧簡集木屑）が発せられている。戦国時代に入ると畑山氏の勢力が及び、次いでその本家安芸氏の支配下に入ったが、天文一六年（一五四七）大忍庄が長宗我部氏の支配下に入って以後、しだいにその勢力が伸びてきた。永禄初年には上夜須の尼森（かみやすのあまがもり）城に部将吉田重俊が入り、永禄一二年（一五六九）の安芸氏滅亡により係争に終止符が打たれた。

前記地検帳によると、添地に宗円氏が記される。付近の地のほとんどが「宗円分」とあり、夜須川や東川村細川（ほそかわ）にも「宗円分」をもつ有力土豪であった。

出典　平凡社「日本歴史地名大系」