外傷性脳内血腫(読み)がいしょうせいのうないけっしゅ(英語表記)Traumatic intracerebral hematoma

六訂版 家庭医学大全科 「外傷性脳内血腫」の解説

外傷性脳内血腫
がいしょうせいのうないけっしゅ
Traumatic intracerebral hematoma
(外傷)

どんな外傷か

 脳の内部に出血して血腫になったものです。

 高血圧が原因で出血する脳出血と区別するため、けがが原因の場合は外傷性脳内血腫と呼びます。

原因は何か

 脳組織の挫滅(ざめつ)脳挫傷(のうざしょう))があり、そこからの出血が脳の内部にたまって脳内血腫になります。出血が脳の表面(脳表)にもたまれば、急性硬膜下血腫(きゅうせいこうまくかけっしゅ)になります。

症状の現れ方

 血腫による圧迫脳挫傷のため、頭蓋骨の内側の圧が高まり(頭蓋内圧亢進(ずがいないあつこうしん))、激しい頭痛、嘔吐意識障害などが認められます。

 脳内血腫の局所の症状として、半身麻痺片麻痺(かたまひ))、半身の感覚障害、言語障害、けいれん発作などが現れることもあります。多量の血腫による圧迫で脳ヘルニア状態にまで進行すると、深部にある生命維持中枢(脳幹(のうかん))が侵され(呼吸障害など)、最終的には死に至ります。

 受傷直後に血腫ができて症状が現れることがほとんどですが、高齢者では遅れて血腫が増大することがあるので注意が必要です。最近の統計では、重症の外傷性脳内血腫(脳挫傷を含む)の14%(50歳以上では22%)で意識障害が遅れて現れています。意識障害出現までの時間は急性硬膜外血腫急性硬膜下血腫よりやや長く、その74%が6時間以内でした。

検査と診断

 血腫は頭部CTで白く映ります(高吸収域)。

治療の方法

 血腫の大きさと症状の程度によって、緊急に開頭血腫除去術(かいとうけっしゅじょきょじゅつ)が行われます。日本のガイドラインでは、血腫の直径が3㎝以上を手術の目安にしています。

 血腫が少量の場合は手術の効果が低いため、重症でも薬物療法が選択されることが多く、頭蓋内圧亢進に対する脳圧降下薬(グリセオールやマンニトール)の点滴注射が行われます。頭蓋内圧亢進に対する特殊な治療法としてバルビツレート療法や低体温療法がありますが、副作用も大きいため、適応は慎重に判断されます。

 脳ヘルニアが進行し、脳幹の機能が失われた場合(たとえば呼吸停止)は、手術での危険が高く、開頭手術を行えないこともあります。

 予後は一般的に入院時の意識障害の程度に比例し、昏睡(こんすい)状態の重症脳内血腫(脳挫傷を含む)の死亡率は44%、社会復帰は31%と報告されています。

並木 淳

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報