変動地形(読み)ヘンドウチケイ(英語表記)tectonic relief

デジタル大辞泉 「変動地形」の意味・読み・例文・類語

へんどう‐ちけい【変動地形】

断層褶曲など、地殻変動によって生じた地形断層崖地溝などが知られる。→組織地形

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「変動地形」の意味・わかりやすい解説

変動地形
へんどうちけい
tectonic relief

断層運動や褶曲(しゅうきょく)運動などの地殻変動(運動)の影響で、変動したことが確認されている地形。地形面は侵食の結果つくられているものであるが、地層などをずらせた断層が地表にまで到達すると、地形面をもずらせて変形させることになる。活断層は、最近数十万年間に繰り返し活動し、将来も活動する可能性のある断層であり、河岸段丘面など何らかの基準面を示す地形がずれていることで確認される。たとえば、徳島県西部の吉野川沿いでは、東西性の中央構造線活断層系(中央構造線断層帯)の池田断層の活動によって相対的に北側が上昇し、2万4000年前に形成された河岸段丘面が、約25メートルも食い違って段差が形成されている。このように同じ高さだった段丘面が、活断層によるずれで食い違ったものは変動地形の代表例である。

 活断層の運動によって形成された変動地形には多くのものが認識されており、断層変位地形断層地形ともよばれている。活断層によって地表に出現した断層面がそのまま保存されているものは断層崖(がい)fault scarpとよばれ、変動地形の一種である。尾根や谷が横ずれ断層によってずらされた結果、横ずれ尾根、横ずれ谷が形成され、谷の出口をずれた尾根がふさぐと閉塞丘(へいそくきゅう)が形成される。また、分岐した断層に挟まれて落ち込んだ凹地(くぼち)が形成されることがあり、大規模なものは地溝graben、小規模なものは断層凹地、それに水がたまっているものは断層池とよばれる。長野県の諏訪湖(すわこ)は糸魚川(いといがわ)‐静岡構造線沿いで、活断層である西側の岡谷(おかや)断層群と東側の諏訪断層群に挟まれて落ち込んだ地溝に水がたまったものである。また、滋賀県の琵琶湖(びわこ)はその西縁に存在する琵琶湖西岸断層に沿って東側が落ち込んで形成された半地溝に水がたまったものであり、いずれも変動地形に含まれる。静岡県の有度丘陵(うどきゅうりょう)のように、もともと水平であった平坦(へいたん)面がある方向(有度丘陵の場合は北西)に傾く傾動という変動がみられることがあり、これも変動地形の一種である。

 活断層調査では、空中写真を立体視することによって地形を詳細に観察し、変動地形を認定することが重要である。変動地形を扱う学問分野として変動地形学がある。

 褶曲運動が変動地形として認識されることもある。山形県の小国川(おぐにがわ)流域では、新第三系の地層が褶曲しているが、この付近で同じ高さで形成された若い河岸段丘面が、背斜部では上昇し、向斜部では下降して高度差が生じていることが知られている。これは、段丘面が形成された後にも緩やかな褶曲運動が継続して起こっていることを示しており、活褶曲active foldingという現象として知られている。

 変動地形に対する用語として、侵食の結果生じた地形を組織地形という。組織地形は、断層、節理、褶曲などの地質構造を反映した侵食地形であったり、花崗岩(かこうがん)、砂岩石灰岩など、それぞれの岩質の違いに対応して形成された侵食地形であったりする。断層の両側が差別侵食を受けて、侵食に対して強い側が高く残ることでできた崖(がけ)は、断層線崖fault-line scarpとよばれる。これは組織地形の一種であり変動地形ではない。三角末端面という地形は尾根の末端部が三角形の形をしているものをさす。活断層で尾根が切断されて形成されたものは変動地形であるが、尾根と直交する方向の河川によって急激に侵食されて形成されたものは侵食地形である。

[村田明広]

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改訂新版 世界大百科事典 「変動地形」の意味・わかりやすい解説

変動地形 (へんどうちけい)

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世界大百科事典(旧版)内の変動地形の言及

【構造地形】より

…一方,ニュージーランドや日本のような新しい地質時代(新第三紀の後半以来現在まで)の地殻運動や火山活動が活発な変動帯では,断層や褶曲運動が現在も活発で,地殻内部やマントル上部に原因をもつ地殻運動(地殻変動)に起因する地形が多く認められる。そこで,従来〈構造地形〉として一括されていた地形を,岩石の性質や地質構造を反映した浸食地形と,地殻変動(地殻運動)に起因する地形とに二分することが1950‐60年代にニュージーランドや日本の地形学者によって提唱され,前者を〈組織地形〉,後者を〈変動地形〉とよぶようになった。しかし,一部では従来のように〈構造地形〉の語を厳密に定義せず,組織地形と変動地形との両方に用いている場合があるので注意を要する。…

【断層】より

…このような断層特有の地形を総称して断層地形という。このうち断層運動そのものに起因するものを特に変動地形と呼んで区別することがある。断層運動によって生じた崖を断層崖と呼ぶが,これは変動地形の一つである。…

※「変動地形」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」