壺折(読み)ツボオリ

デジタル大辞泉 「壺折」の意味・読み・例文・類語

つぼ‐おり〔‐をり〕【×壺折】

小袖うちきなどのすそをたくし上げ、腰のあたりをひもで結び留めてから折り下げること。→壺装束つぼそうぞく
歌舞伎衣装の一。にしきなどで作った、広袖丈長たけながの羽織状のもの。時代物貴公子高位武人常服に用いる。

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精選版 日本国語大辞典 「壺折」の意味・読み・例文・類語

つぼ‐おり ‥をり【壺折】

〘名〙
① 小袖、打掛などの着物の両褄を折りつぼめ、前の帯にはさみ合わせて、歩きやすいように着ること。
※浮世草子・紅白源氏物語(1709)序「吉野山の花を雲と見給ひ、立田川の紅葉を錦と見しは万葉の古風、市女笠着てつぼほり出立の世もありしとかや」
② 能の女装の衣装のつけ方の名称。唐織りや舞衣などの裾を腰まであげをしたようにくくり上げて、内側にたくしこんで着ること。
※波形本狂言・鬮罪人(室町末‐近世初)「ざひ人のやうにとりつくらふて下され〈略〉ツボ折作物コシラヱル内ニ」
③ 歌舞伎で、時代狂言の貴人や武将上着の上に着る衣装。打掛のように丈長(たけなが)で、広袖の羽織状をなした華麗なもの。壺折衣装。
※歌舞伎・天満宮菜種御供(1777)二「菅秀才、壺折りにて、半弓的矢を射てゐる」

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世界大百科事典(旧版)内の壺折の言及

【能装束】より

…たとえば脇能の前ジテとして登場する老人の役ならば,《高砂》《難波(なにわ)》《老松(おいまつ)》《養老》《嵐山(あらしやま)》《弓八幡(ゆみやわた)》《絵馬》などに共通して,仮髪は尉髪,面は小尉(こじよう),着付は小格子厚板,袴は白大口,上衣は水衣という扮装類型になる。また,たとえば王妃の役なら,天竺の旋陀夫人(《一角仙人》のツレ)も,唐の楊貴妃(《楊貴妃》のシテ)も,日本の白河院の女御(《恋重荷(こいのおもに)》のツレ)も,みな,かぶり物は天冠,着付は摺箔,袴は大口,上衣は唐織を壺折(つぼおり)(後述)に着るという扮装になる。こうした扮装類型は,数え方にもよるが,約80~90種とみることができる。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」