地方大学振興法(読み)ちほうだいがくしんこうほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「地方大学振興法」の意味・わかりやすい解説

地方大学振興法
ちほうだいがくしんこうほう

東京23区内の大学定員の増加を原則10年間認めない法律。東京都心への学生流入を抑え、地方での就学・就職機会を増やし、地方大学や地域経済を活性化する目的がある。正式名称は「地域における大学の振興及び若者雇用機会創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律」(平成30年法律第37号)。2018年(平成30)6月に施行された。既存学部の改廃による新学部設置や留学生・社会人の受入れなどを除き、特定地域の大学の定員増を認めないと規定。特定地域として政令で東京23区を指定した。ただ都心の大学経営にも配慮し、禁止期間を2028年3月末までの10年間の時限措置とした。地方大学や地元企業と連携し、産業振興や人材育成に取り組む地方自治体への交付金制度も創設した。地方自治体は地域の専門人材育成や中核産業振興を柱とする計画を策定。この計画を国が認定し、地方自治体へ交付金(2018年度予算で100億円)を配分する仕組みである。

 東京圏(1都3県)への転入転出状況をみると、1990年(平成2)以降ほぼ一貫して転入超過状態が続き、転入者の大半進学・就職のための15~24歳で占められている。地方大学振興法は、若者の東京一極集中を改め、地方大学の魅力を高め、地方で若者の雇用機会を増やして地域の活力を高めるねらいがある。ただ都心の定員を制限するのは、学問の自由に反するなどとして、東京都のほか日本私立大学連盟や共産党などが反対した。

[矢野 武 2018年12月13日]

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