土車(読み)ツチグルマ

デジタル大辞泉 「土車」の意味・読み・例文・類語

つちぐるま【土車】[謡曲]

謡曲四番目物観世喜多流世阿弥作。出家した主人深草少将幼君土車に乗せた小次郎が、尋ねる主人と善光寺で巡り合う。

つち‐ぐるま【土車】

土を運搬する二輪車

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精選版 日本国語大辞典 「土車」の意味・読み・例文・類語

つち‐ぐるま【土車】

[1] 土を載せて運ぶ二輪車。現代大八車祖型
※車屋本謡曲・土車(1430頃)「すまで世に経る土車、めぐるや雨のうき雲」
[2] 謡曲。四番目物。観世・喜多流。世阿彌作。深草少将は妻に死別した悲しみのあまり一子を見捨てて出家する。家臣小次郎は幼君を土車に乗せて諸国を尋ね歩き、ついには心も乱れて善光寺に至るが、ここで父子はめでたく再会する。男物狂物(おとこものぐるいもの)

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改訂新版 世界大百科事典 「土車」の意味・わかりやすい解説

土車 (つちぐるま)

本来は土砂運搬のための車で,現在でも〈キグルマ〉〈ネコグルマ〉などとも呼ぶ木製の車を用いる所もある。古く明恵の講義の聞書《華厳信種義聞集記(けごんしんしゆぎもんじゆうき)》に〈車ニ多種アリ〉として〈下品ハザウヤクツチ車〉とみえており,室町期になると,能《土車》のほか御伽草子にこの語は散見され,幸若舞曲《静(しずか)》や《景清(かげきよ)》にうかがわれる〈さう車(雑車)〉も,この類であろうと考えられる。説経《をぐり》では餓鬼阿弥姿の小栗判官が土車にのせられて宿(しゆく)送りされることが長々と語られており,江戸の浄瑠璃摂州合邦辻》でもこの車は重要な役割を果たしている。《病草紙》の一本や,《一遍聖絵(ひじりえ)》にもかかれているが,車が常民日常の具となる以前,車上の乞丐人(こつがいにん)や異形なるものに対して神聖視する風のあったことが考えられる。これをひいたり押したりすることで,結縁(けちえん)の意識も持ちえたろう。能《車僧》の飛ぶ車も,《深山和尚行状記》にうかがわれる〈破車〉,《夢中問答集》にみられる〈破レグルマ〉も,同様土車の類であろう。
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