噛みたばこ(読み)かみたばこ(英語表記)chewing tobacco

日本大百科全書(ニッポニカ) 「噛みたばこ」の意味・わかりやすい解説

噛みたばこ
かみたばこ
chewing tobacco

たばこの葉を口中で噛み、その味と香りを味わうもの。種類にはプラグplug(板状)、ツイストtwist(捻(ねじ)り巻き)、スクラップscrap(細刻み)などがあり、最近ではタブレットtablet(錠剤)タイプのものもある。製法は、原料葉たばこを熱処理して中骨(ちゅうこつ)(葉脈)を除き、砂糖とカンゾウを混合した飴(あめ)状の液に浸して甘味をつけ、ローラーの間を通して余分の糖液を絞ったあと乾燥させ、さらに香料ラムなどを添加する。原料加工の工程はここで終わるが、種類によってあとの処理は異なってくる。プラグは、葉で大きさを計りながら四角形をつくり、上巻き葉で包んだものを金属の枠に入れて成型し、圧力をかけて板状にする。ツイストは、原料葉の加工後葉を捻り巻きにして上巻き葉で包み、ふたたび捻ってから圧力をかけて製品にする。スクラップとファイン・カットは、原料葉の加工後葉を粉砕、あるいは細刻して葉片にし、包装する。タブレットは、原料葉を使用せず、たばこの成分とメンソールチューインガムに加工したもので、成分のニコチン添加量には強弱の2種類があり、禁煙用に用いられている。

 東南アジア方面の民族には、古くから植物の葉を噛む風習がある。タバコの葉を土中の穴に埋めて発酵させ、希望する香りをつけるためにほかの植物を混ぜ、ふたたび柔らかい土で覆って数日後取り出し、縄状に絞ったり、束にしておく。アフリカでは民族により、ウシヤギの糞(ふん)を混ぜ、壺(つぼ)に詰めて熟成を待つものもある。アメリカやヨーロッパでは、喫煙禁止場所、点火困難な海上での喫煙の代用に労働者などが用いており、神経と筋肉の鎮静に役だつというが、日本では用いられていない。

[田中冨吉]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例