古市郷(読み)ふるいちごう

日本歴史地名大系 「古市郷」の解説

古市郷
ふるいちごう

和名抄」にみえるが、諸本ともに訓を欠く。郡名と同じく本来の訓は「ふるち」であったと考えられるが、遺称地とみられる現羽曳野はびきの市の古市は「ふるいち」と読んでいる。古市郡内の中心的な郷で、古代の官道である丹比たじひ(竹内街道)の石川の渡河点に位置し、また東高野街道がこれと直交する交通の要地を占める。律令制下の古市郡家も当郷内にあったことはほぼ確実で、誉田白鳥こんだはくちよう遺跡(羽曳野市)がそれではなかったかと推定されている。

古市の地名は古代において著名であった。「日本書紀」景行天皇四〇年是歳条に伊勢の能褒野のぼので死んだ日本武尊の霊が白鳥となって「旧市邑」に飛来したため、この地に陵を造ったとある。

古市郷
ふるちごう

「和名抄」に記す滋賀郡四郷のうち最も南に位置し、瀬田せた川西岸一帯に比定される。訓は同書高山寺本・東急本ともに「布留知」(フルチ)とする。天平元年(七二九)から続く志何郡古市郷計帳に戸主として大友但波史吉備麻呂がみえ、郡内大友おおとも郷にかかわる渡来系氏族の大友氏の勢力が郡南部にも及んでいたことがわかる。同帳にあらわれる三上部足戸・大田史君足らは滋賀団に配属されていたのであろう。神亀二年(七二五)の志何郡計帳にみえる大友但波氏の一族には健児と注記され、天平六年の計帳まで確認されるものの、健児制停止後の天平一四年計帳には注記がないことから、同制度停止の実効があったことを裏付けるものと思われる。

古市郷
ふるちごう

「和名抄」東急本は「不留智」と訓じる。古市を称する郡としては河内国古市郡があり、郷名としては当郷のほか河内国古市郡・近江国滋賀郡・因幡国邑美郡・伯耆国八橋郡の四郷がある。西日本の各地に同名の郷の点在する理由としては、古市村主がそれぞれの地域の中心的氏族であったことによるものであろう。「新撰姓氏録」によれば同氏は百済の虎王の後と称する。

古市郷
ふるいちごう

「和名抄」諸本とも訓を欠く。現鳥取市古市を遺称地とし、千代川東岸の旧美保みほ村地区一帯が郷域と推定される。「因幡志」は古くは古市千軒という大きな市場であったという伝説を紹介し、吉成よしなり富安とみやすなどの近辺の村は当郷より派生したと記す。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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