博士課程の実質化(読み)はくしかていのじっしつか

大学事典 「博士課程の実質化」の解説

博士課程の実質化
はくしかていのじっしつか

博士学位は自律した研究者であることの大学による認定であるが,その能力は実際に研究をすることによって培われる。そのため,博士の養成は確立した研究者である教員のもとでの徒弟教育的な訓練となるが,アメリカ合衆国ではこの養成をグラデュエート・スクール(大学院)に入学した学生に,当該分野の基礎教育を授業として体系的に提供しつつ研究テーマを確立させ,総合試験に合格した者をキャンディデート(アメリカ(candidate: 博士候補者(アメリカ))としてから徒弟訓練に入ることで,一定のプログラム化つまり課程化に成功した。日本では,第2次世界大戦後,博士の養成に「課程」という言葉は用いるようになったものの,アメリカのシステムについての理解も不十分であったことから,徒弟訓練のみに頼る状態が続いており,2005年の中央教育審議会答申「新時代の大学院教育」に盛り込まれるなど,「課程」としての「博士課程の実質化」が言われ続けている。その主張の中に課程を定めた年数内に博士を創出するとの考えが含まれているが,アメリカでは年数内であることが求められるのはキャンディデート以前の学習に対してであり,徒弟訓練に入ってからは研究の成功が必要であり,博士号取得にいたる年数には当然に分野差,個人差がある。
著者: 舘 昭

出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報

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