南足柄(市)(読み)みなみあしがら

日本大百科全書(ニッポニカ) 「南足柄(市)」の意味・わかりやすい解説

南足柄(市)
みなみあしがら

神奈川県南西部にある市。1972年(昭和47)市制施行。伊豆箱根鉄道大雄山(だいゆうざん)線が通じる。箱根火山古期外輪山の北東斜面、その裾(すそ)の緩傾斜の火砕流(かさいりゅう)台地足柄平野北西部にわたって広がる。中心市街地の関本地区は古代の東海道の坂本駅家(うまや)の本村で、足柄関の東麓(とうろく)にあって関本と名づけられ、江戸時代は矢倉沢(やぐらさわ)往還宿場町であった。昭和初期に清左衛門地獄(せいざえもんじごく)その他の豊富な湧水(ゆうすい)と塵埃(じんあい)の少ない空気を利用して富士写真フイルム(現、富士フイルム)工場が設けられ、市の近代的発展のきっかけをなした。ほかにミカン、茶が特産物。怒田(ぬだ)の台地上の藤原範茂(のりもち)の墓は、承久(じょうきゅう)の乱(1221)に関係した罪によって鎌倉へ送られた範茂が入水(じゅすい)死して葬られた所と伝えられる。矢倉岳東麓の矢倉沢関は、根府(ねぶ)川、仙石原(せんごくはら)、谷峨(やが)、河村の諸関とともに箱根関を補助し江戸の防衛線をなしていた。北の酒匂(さかわ)川の堤防は文命堤(ぶんめいてい)(東堤(とうてい))とよばれ、江戸幕府が民間技術を入れて完成しえた難工事の好例とされる。曹洞(そうとう)宗の名刹(めいさつ)大雄山最乗寺がある。また内山の保福寺(ほうふくじ)の薬師如来坐像(にょらいざぞう)と十一面観音(かんのん)立像、怒田の朝日観音堂の兜跋毘沙門天(とばつびしゃもんてん)像と聖(しょう)観音像、地蔵堂地蔵菩薩(ぼさつ)立像は県指定重要文化財。面積77.12平方キロメートル、人口4万0841(2020)。

[浅香幸雄]

『『南足柄市史』全13冊(1988~2001・南足柄市)』


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