十種競技(じっしゅきょうぎ)(読み)じっしゅきょうぎ(英語表記)decathlon

翻訳|decathlon

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

十種競技(じっしゅきょうぎ)
じっしゅきょうぎ
decathlon

陸上競技のなかの混成競技の一つ。人間の基本動作である走・跳・投の各種目を組み合わせた10種目を2日間で行い、各種目の成績を混成競技採点表によって点数に換算し、その合計点を競う。男子のオリンピック種目で、第1日に100メートル走、走幅跳び砲丸投げ、走高跳び、400メートル走、第2日に110メートルハードル、円盤投げ、棒高跳びやり投げ、1500メートル走をこの順序で行う。2日間で10種目をこなす体力とオールラウンドの運動能力が必要で、勝者には「キング・オブ・アスリート」として、最大級の賛辞が送られる。競技者は各種目のうち1種目でもスタートしなかったり、また1回も試技しなかった場合は、それ以降の種目の参加を許されず棄権とみなされる。したがって最終順位にも加えられない。オリンピックでは1904年のセントルイス大会で初めて実施されたが、競歩ハンマー投げが含まれており、現行の種目で行われるようになったのは1912年のストックホルム大会からである。

 競技の実施にあたっては各種目の競技規則が適用されるが、例外としては、(1)投擲(とうてき)種目と走幅跳びは3回の試技のうちベスト記録を採用、(2)不正スタート(フライング)は各レースで1回のみとし、その後のフライングはすべて失格とする、(3)風力計測する種目の平均秒速が2メートルを超えると総得点は参考記録となる、などがある。

 採点表は、1912年の導入から6回更新し、1985年の採点表が現在使われている。当初各種目の世界記録を1000点とし、以下順に下げていくという方式を採用していた。その後の記録向上で、人類の限界とみられる記録を1500点とする改正を行ったが、棒高跳びにおけるグラスファイバーポールの出現にみられるように器具の改良・進歩などでこの「限界」が突破される可能性が生まれ、どんなに好記録を出しても1500点で打ち切りという矛盾や、種目によるアンバランスも生じたため改定し、現在の青天井方式に至っている。

 現行の採点表によると、100メートル走で1000点を取るには10秒39(世界記録の9秒58は1202点)で走り、棒高跳びで1000点を取るには5メートル29センチ(世界記録の6メートル18センチは1291点)を跳ぶ必要がある。なお十種競技の世界記録は2020年3月の時点で、ケビン・マイヤーKevin Mayer(フランス。1992― )の9126点(2018年)。女子は当初五種競技がオリンピック種目であったが、体力の向上などで、1984年のロサンゼルス大会から七種競技に変更された。

[加藤博夫・中西利夫 2020年4月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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