出衣(読み)イダシギヌ

デジタル大辞泉 「出衣」の意味・読み・例文・類語

いだし‐ぎぬ【衣】

直衣のうしまたは衣冠姿で、美しく仕立てた内着のあこめの裾先をほうらんの下からのぞかせること。出衵いだしあこめ出袿いだしうちき出褄いだしづま
寝殿牛車すだれの下から、女房装束の袖や裾先を出すこと。うちいでのきぬ。うちだし。

だし‐ぎぬ【出衣】

いだしぎぬ」に同じ。
下簾したすだれより―出して」〈太平記・二〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「出衣」の意味・読み・例文・類語

いだし‐ぎぬ【出衣】

〘名〙
直衣(のうし)姿の晴(はれ)の風流の装飾。時に衣冠姿にも行なう。下着の衵(あこめ)の重ねを美麗に仕立て、前身指貫(さしぬき)に着籠めずに、裾先を袍(ほう)の襴(らん)の下からのぞかせること。出衵(いだしあこめ)。出打着(いだしうちき)出褄(いだしづま)
讚岐典侍(1108頃)下「すはうのこき、うたるくはうこくの出しきぬ入てもてつづきたる」
② 牛車の簾(すだれ)の下から女房装束の裾先を出して装飾とすること。寝殿の打出(うちで)のように装束だけを置いて飾りとするが、童女の車は実際に乗って童女装束の汗衫(かざみ)や袴の裾を出す。→出車(いだしぐるま)
※弁内侍(1278頃)寛元四年四月一日「平野の祭なり。上卿土御門大納言〈顕定〉。弁〈経俊〉。車〈すけつぐ〉。くやく〈ときつな〉。いだしぎぬ〈若かへで〉」
③ 模様や意匠などを表に打ち出したり押し出したりした衣。

だし‐ぎぬ【出衣】

〘名〙 衵(あこめ)の重ねや女房装束の裾先を衣服や簾の下から出して装飾とすること。→いだしぎぬ
※太平記(14C後)二「下簾より出絹(タシキヌ)出して女房車の体に見せ」

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世界大百科事典(旧版)内の出衣の言及

【衣】より

…このように平安末期ころから直衣や狩衣の下着を〈きぬ〉といってきたが,その色には束帯の衵のように紅だけとは限らず,薄色,萌黄(もえぎ),蘇芳(すおう),紅梅,女郎花(おみなえし)などがあり,白は老年者や平生衣に用いられ,地質も綾,浮織物,唐織物などいろいろなものが用いられた。 なお直衣のときには,この衣を指貫(さしぬき)の上に着て,その褄(つま)を直衣下から出す着方があり,これを出衣(いだしぎぬ)といった。この方法はまた衣冠のときにも行われ,出袿(いだしうちぎ),出衵(いだしあこめ)ともいった。…

※「出衣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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